「10歳の壁」から貧困家庭の子どもを救え

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 貧しい家に生まれた主人公が苦学して成功する物語は多いが、現実は厳しい。小学校4年(10歳ごろ)時に、家庭の貧富の差による「学力格差」が急拡大する傾向があることが、日本財団などの調査でわかった。貧困家庭の子どもが大人になっても貧しさから脱することができない「負の連鎖」の一因とも指摘される。分析調査を行った日本財団職員の栗田 萌希(もえき) さんが解説する。

授業についていけない

家庭の経済状況は子どもの学力に大きく影響する(写真はイメージです)
家庭の経済状況は子どもの学力に大きく影響する(写真はイメージです)

 生活に困窮する家庭の子どもたちに食事を提供したり、勉強の手助けをしたりするボランティア活動が各地で行われている。日本財団も、そうした子どもたちに食事や学習など包括的な支援を行う児童施設を運営しているが、そこには様々な事情を抱えた子どもたちが集まってくる。

 ある小学4年の男子児童は、両親の離婚をきっかけに生活保護を受給する母親と2人暮らしになった。最近、学校の授業に「まったくついていけない」と話し、宿題や課題をすべて投げ出してしまっている。

 漢字の読み書きや四則計算などの基礎を身に付けていないため、考えること自体が面倒になっているようだ。

 同じように母親と2人暮らしの小学1年の男児もいる。父親とは死別し、今年の夏ごろから施設に通うようになった。

 こちらは生活面での課題が目立つ。深夜遅くまでゲームに熱中して睡眠時間が極端に短く、朝食はほとんど食べない。話すときは、友人たちにも大人にも命令口調だ。一般的な家庭なら「しつけ」を受けて身に付くはずの生活習慣や社会性が、欠けてしまっているのだ。

子どもの成績を左右する「貧富の差」

 厚生労働省が今年6月に発表した2015年の「子どもの貧困率」は13.9%。7人に1人の子どもが生活に困窮している状況だ。前回調査(12年)の16.3%からは改善したが、経済協力開発機構(OECD)加盟国の平均を上回り、シングルマザーなどの「ひとり親世帯」に限れば50.8%に達していた。

 ここで言う「貧困」とは、生きるために最低限必要な衣食住が不足している状態(絶対的貧困)ではなく、普通の生活を送るためのお金が十分にない状態(相対的貧困)を指す。具体的には、国民一人ひとりを所得の順に並べ、その真ん中に来る額(中央値)の半分に満たない額での生活を強いられている状況だ。15年の基準では、年122万円以下の生活水準がそれに該当した。

 家庭の経済状況は、子どもの学力に大きく影響する。お茶の水女子大が14年に行った全国学力テスト(小学6年・中学3年生)の分析では、世帯所得が最も低いグループの子どもと、最も高いグループの子どものテストの正答率の間には、約20ポイントもの開きがあった。

 なぜ、これほどの差が生まれるのか。貧困家庭の子どもの学習を妨げるものは何か。私たち日本財団のチームは、疑問に答えるべく、ある分析調査に取り組んだ。

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