“声のタスキ”もつなぐ…箱根駅伝実況の舞台裏

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コースを歩いて確認

 アナウンサーが伝えようとしているのは、映像だけではわかりにくい選手の息遣いや汗、現場の日差しや温度、風。そして背負っている物語だ。

 そのためにまず、実況に関わるアナウンサーは全員、一度は全コースを数日かけて歩いて確認している。主に新人の頃に経験するといい、30年にわたって引き継がれてきた伝統だ。

3区を走る青山学院大の選手(93回大会から)
3区を走る青山学院大の選手(93回大会から)

 コースの細かい状況は、車から見たのではわからない。選手の目線の先にどんな景色が見えているか、カーブの曲がり具合やわずかな道の勾配を、選手の体がどのように感じ取るのかを自分でも確かめる。

 戸塚中継所から平塚中継所までの海岸沿いを走る3区(21.4キロ)では、風景の変化が少なくなり、映像が単調になってしまう時がある。海からの南風や香りなど、実際に歩いてみないとわからない要素を実況の中に織り込みながら、現場の雰囲気を伝える工夫をしているという。

 過酷と言われる5区(20.8キロ)の「山登り」も経験する。登るに従って気温がどんどん下がっていくことを肌で感じるといい、コース中盤の「宮ノ下」の勾配が最も急であることも身をもって知る。

5区を走る青山学院大の選手(93回大会から)
5区を走る青山学院大の選手(93回大会から)

 5区は2006年大会から距離が延びた後、後半に低体温症などに陥り、失速したり倒れたりする選手が相次ぎ、前回から再び距離を短縮しているほど過酷だ。実際に歩いた経験があるからこそ、選手を取材した際、「宮ノ下が一番きつい」などという声に共感できるのだという。


データを準備し、読み込む

 アンケートも使って選手の出身地、出身校、身長や体重、ベストタイム、高校や大学での記録などの基本的なデータベースを作る。

 その上で、各チームに1人ずつ、担当のアナウンサーを付け、補欠を含めた選手全員に直接会って話を聞いている。さらに担当以外の大学にも出向き、選手、監督への直接取材を繰り返す。取材後は内容をメモにして、それを大学別にファイルし、アナウンサー全員が見ることができるようにして共有している。

 資料は膨大になるが、全てを読み込んで、最後は自分用の資料を作る。担当が移動車であっても中継所であっても、どんな選手が目の前を走ることになり、どのタイミングで実況が回ってくるのかわからない。すぐに対応できるだけの準備をしているのだ。

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