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    国際

    パレスチナ問題、「二国家共存」は死んだのか

    静岡産業大学教授 森戸幸次
     「エルサレムをイスラエルの首都と認める」。トランプ米大統領が昨年12月に出した宣言の衝撃は、いまだ収まる気配を見せていない。宣言は歴代米政権の中東政策から大きく逸脱し、パレスチナだけでなく、広くイスラム世界から強い反発を招いた。パレスチナ側は、イスラエルとの中東和平の道筋を定めたオスロ合意が「崩壊した」と“死亡宣告”を出し、和平は一層遠のいたように見える。中東情勢や国際関係が専門で、昨年12月から今月にかけてパレスチナ自治区やイスラエルを訪れ、現地の情勢を探った静岡産業大学教授の森戸幸次さんに中東和平の行方を展望してもらった。

    衝突の最前線で見たもの

    • (写真1)ベイトエルの検問所に続く道は人通りもなく、トランプ氏の宣言に抗議するパレスチナ人が燃やしたタイヤが煙を上げていた(森戸幸次撮影)
      (写真1)ベイトエルの検問所に続く道は人通りもなく、トランプ氏の宣言に抗議するパレスチナ人が燃やしたタイヤが煙を上げていた(森戸幸次撮影)

     12月28日、私はパレスチナ自治政府の議長府があるラマッラから北のベイトエルへ向かった。ベイトエルには、ユダヤ人入植地とパレスチナ難民キャンプをはさんでイスラエル軍の検問所がある。検問所付近はイスラエル軍兵士とパレスチナの若者による衝突の最前線になっていた。

     検問所に続く道路は閉鎖され、人通りは全くない。抗議デモを行うパレスチナの若者がイスラエル兵に向かって石を投げ、車のタイヤに火を放つ。上空には黒煙が立ち上ってい(写真1)。

     地元に住むパレスチナ人のサトハさんは「私は現在58歳だが、1987年に始まった最初の反イスラエル蜂起(インティファーダ)に参加した世代に属し、私たちは皆、投石などで何度もイスラエルに拘束された過去を背負って生きてきた」と波乱の半生を振り返る。

     この時のインティファーダはイスラエルの占領に抗議する抵抗運動で、女性や子どもを含む多くのパレスチナ住民が参加した。

     サトハさんは後日、兄弟のつてを頼って米国へ移住した。今はニュージャージー州でシーフード店を経営する一方で、ラマッラでも造園業を営んでいる。「4人の子供たちには、しっかりと教育を受けさせて、私たちの世代と同じような思いはさせたくない」と語った。デモに参加する若者がいる一方で、サトハさんのように今回の抗議行動から距離を置く人もいる。

    抵抗運動の指導者、相次ぐ拘束

    • (写真2)ベツレヘム郊外のパレスチナ難民キャンプでは地元組織「人民抵抗委員会」が中心となって抗議デモや投石など組織的な抵抗が続いていた(森戸幸次撮影)
      (写真2)ベツレヘム郊外のパレスチナ難民キャンプでは地元組織「人民抵抗委員会」が中心となって抗議デモや投石など組織的な抵抗が続いていた(森戸幸次撮影)

     30日には、エルサレム南方10キロの聖地ベツレヘム郊外にあるパレスチナ難民キャンプを訪れた。高さ20メートルのイスラエル軍の監視塔が見下ろし、分離壁によってイスラエルと隔てられた難民キャンプ内では、地元組織「人民抵抗委員会」が中心となってトランプ氏の宣言に対する抗議デモや投石など組織的な抵抗が続いていた(写真2)。

     キャンプ内の難民支援センターで活動するアナスさん(29)は、「私はキャンプで生まれた難民の第3世代に属し、12歳の時、2000年に起きた2度目のインティファーダに参加。投石などでイスラエル軍に何度も拘束され、ベツレヘム大学に入学後も逮捕されたが、なんとか学業を続け、商学部を卒業後にアラブ銀行に就職した。それでも、パレスチナの役に立ちたいという思いが募り、難民支援センターで働く道を選んだ」という。

     難民支援センターは、外部の民間活動団体(NGO)の力を借りながらキャンプ内の若者の教育や生活支援などを行っている。アナスさんのように一度外の世界に出た後、キャンプに戻ってきた若者は貴重な戦力だ。

     2度目のインティファーダは、東エルサレムの旧市街にあるイスラム教の聖地にイスラエル右派の指導者が足を踏み入れたことが引き金となった。これに反発するパレスチナ人らが激しい抗議行動を展開、イスラエルとの和平を拒むイスラム主義組織ハマスによって自爆テロなどを含む武力闘争に移行した。

     翌01年の「9.11」米同時テロ以降、イスラエルはパレスチナによる民族テロに対抗するため、ヨルダン川西岸に沿って分離壁を築き始めた。

     私が訪れた難民キャンプでは、トランプ氏の宣言に対して抵抗を呼びかけた人民抵抗委のアミラ代表(50)が先月28日深夜、イスラエル軍によって自宅から連行されるなど、抵抗運動の指導者は厳しい監視下に置かれ、次々と拘束されている。

    2018年01月28日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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