パレスチナ問題、「二国家共存」は死んだのか

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第3次インティファーダは起きるか

東エルサレムの旧市街にある神殿の丘(森戸幸次撮影)
東エルサレムの旧市街にある神殿の丘(森戸幸次撮影)

 トランプ氏の宣言に対するパレスチナ人の自然発生的な暴動は、第3次インティファーダとして大衆的な広がりを見せるのだろうか。私は今回の現地調査を通して、その可能性は低いと見ている。

 第1次インティファーダの時は、当時チュニジアの首都チュニスに本部を置いていたパレスチナ解放機構(PLO)が、イスラエル占領下に住むパレスチナ人の組織化に成功したことが大きかった。インティファーダが始まった翌年の1988年、PLOはパレスチナ「全土」の解放を目標とするのではなく、78%をイスラエル国家のものと認めた上で、残りの22%にあたるヨルダン川西岸・ガザ地区に東エルサレムを首都とする「ミニ」パレスチナ国家の建設を目指す方針へと転換した。

 93年、PLOはイスラエルとの秘密交渉を通じて、「二国家共存」と西岸・ガザ地区における暫定自治を定めたオスロ合意にこぎ着けた。自治区に帰還を果たしたPLOの下で、(1)暫定自治 (2)西岸・ガザからのイスラエルの段階的撤退 (3)エルサレムなどの最終地位交渉――という和平プロセスが始まった。暫定自治はスタートしたものの、イスラエル占領地にはユダヤ人入植地が多数あるため、撤退交渉は難航。プロセスは前に進まなくなり、パレスチナの住民には失望感が広がった。

 また、暫定自治を担う海外からの「帰還組」のPLO幹部による権力独占や腐敗が目に余るようになり、「地元組」の住民は冷ややかな眼差(まなざ)しを向けている。今のPLOにこうした大衆を動かす力はない。

 代わりに支持を伸ばしたのが、イスラエルとの和平に反対するハマスである。第2次インティファーダで主役を担ったハマスは、2006年のパレスチナ評議会(国会に相当)選挙でPLOに圧勝、権力を掌握した後、ガザ地区を拠点に08~9年と14年にイスラエルとの間で武力衝突(ガザ戦争)を起こした。しかし、最近はイランからの支援の先細りなどで資金面の苦境が伝えられており、長年対立していたPLO主流派との和解、エジプトとの関係改善に動いている。組織の立て直しが急務であり、本格的な民衆蜂起に取り組むような余裕はない。

土地を巡る争い、どちらに正当性?

 パレスチナ自治政府のアッバス議長は今月14日、PLOの中央評議会を緊急招集し、オスロ合意は「崩壊した」と宣言し、イスラエルの国家としての承認を取り消した。米国に対しては、「我々にはもはや頼むべきものはない。今後は有効な民族闘争を展開していく」と、今後は調停役として認めないとの姿勢を明らかにした。

 ただでさえ「瀕死の状態」と言われたオスロ合意に死亡を宣告したことで、「二国家共存」の道は閉ざされてしまったのだろうか。私はそうは思わない。「パレスチナ人に唯一残されているものは、過去にも将来にも決して消え去ることのない国家樹立への夢」(著名なエジプト人ジャーナリスト故ムハンマド・ヘイカル)だからだ。

 アッバス議長は14日の演説でこう語った。「ユダヤ人建国の精神的指導者ヘルツルは、『土地なき民に民なき土地を』と(イスラエルの地に故郷を再建する)シオニズム運動を始めたが、実際に彼はパレスチナにやって来て、かの地に住むパレスチナ人を見たではないか。その後、英国はシオニズムにお墨付きを与えるバルフォア宣言を出した。英国は米国と共に、欧州の『ユダヤ人問題』を解決するために、第2次世界大戦中のホロコースト(ユダヤ人の大量虐殺)の後、ユダヤ人をパレスチナに移民させた。私は、こうした英国の責任にあらためて謝罪を要求し、パレスチナ国家の承認を迫りたい」。パレスチナ人はイスラエル建国により土地を追われたという主張だ。

 イスラエルのネタニヤフ首相は、翌15日の記者会見でさっそく反論した。「アッバス議長の発言は、我々イスラエルの主張(の正しさ)を図らずも示した。つまり、国境線を有するユダヤ人国家に反対することに、紛争の根源があることが明らかになったのだ」。ネタニヤフ首相はユダヤ人国家の「生存権」を持ち出してイスラエルの立場を説明した。

 それでは、いったい、どちらの主張に正当性があるのだろうか。

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