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    国際

    朝鮮半島、平昌五輪後に待ち受けるシナリオ

    龍谷大学教授 李相哲
     韓国・ 平昌 ( ピョンチャン ) で開かれる冬季五輪の開幕を前に、朝鮮半島情勢から目が離せなくなってきた。制裁で孤立していた北朝鮮が韓国との対話攻勢に乗り出し、五輪・パラリンピックに選手を派遣することを決めた。対北融和に前のめりの韓国・ 文在寅 ( ムンジェイン ) 政権、警戒しながらそれを見守る米国という構図だ。状況は今後、どう展開していくのか。朝鮮半島情勢に詳しい龍谷大学教授の李相哲さんに聞いた。(聞き手・読売新聞メディア局編集部次長 田口栄一)

    五輪開幕前の揺さぶり

    • 1月25日、韓国・鎮川ナショナルトレーニングセンターに到着した北朝鮮の女子アイスホッケー選手たち。平昌冬季五輪の女子アイスホッケーでは南北合同チームが結成された(AP)
      1月25日、韓国・鎮川ナショナルトレーニングセンターに到着した北朝鮮の女子アイスホッケー選手たち。平昌冬季五輪の女子アイスホッケーでは南北合同チームが結成された(AP)

     ――北朝鮮は1月29日、北朝鮮の金剛山(クムガンサン)で五輪開幕前の2月4日に計画していた南北合同文化イベントを中止すると通告してきました。この時期に揺さぶりをかけてきた北朝鮮の狙いは何ですか。

     「韓国世論、メディアに対する牽制(けんせい)がまず一つ。金剛山でのイベントのため、韓国側は発電用の軽油1万リットルを提供することになり、それについて韓国国内で賛否両論が沸き起こっていました。国連の対北朝鮮制裁に抵触すると主張する人、国連の許可を得れば問題ないと言う人、それでも米国の同意は得にくいだろうと懸念する人の間で議論が過熱していたので、北朝鮮は『平昌行きのバスはまだ発車していないぞ』と韓国の人たちに警告したのです。

     次に、北朝鮮側の事情もあります。金剛山という限定された場所とはいえ、韓国の人々がイベントを行い、それを見る人を会場に運ぶには時間もお金もかかる。北朝鮮はそれに見合う韓国側からの見返りをまだ何も得られていない状況でした。

     また、このタイミングで揺さぶりをかけてきたのは、やめても北朝鮮にはあまり実害のないイベントを中止してみせることで、南北共同イベントはいつでも取りやめる可能性があることを韓国に認識させたかったのだと思います。

     とはいえ、北朝鮮が五輪に参加して失うものは何もありません。この時期になって五輪・パラリンピックをボイコットすることはないでしょう」

    北朝鮮のしたたかな計算

    • 1月17日、南北軍事境界線上の板門店で行われた韓国と北朝鮮の次官級会談が終わり、会場を後にする人たち。南北の当局者による会談は今年1月9日、2年2か月ぶりに再開した(AP)
      1月17日、南北軍事境界線上の板門店で行われた韓国と北朝鮮の次官級会談が終わり、会場を後にする人たち。南北の当局者による会談は今年1月9日、2年2か月ぶりに再開した(AP)

     ――北朝鮮が今年になって韓国に接近する姿勢を見せた背景には何があると思いますか。

     「北朝鮮は当初、文大統領の呼びかけを無視し続け、まずは米国と対話したいと考えていました。ところが、米国が求めていたのは「核放棄」を前提とした話し合いでした。北朝鮮にはとてものめない話です。それで韓国に接近することにしました。

     なぜ今かというと、北朝鮮は昨年11月に大陸間弾道ミサイル(ICBM)「火星15」を発射した後、核保有を宣言したので、これからは経済に取り組むという姿勢を国内に示す必要がありました。国際社会を見回すと、北朝鮮に手を差し伸べそうな人は文大統領しかいません。

     また、今なら、文大統領を意のままに動かせると思ったのかもしれません。文大統領は平昌五輪を何としても成功させよう思っていますし、南北首脳会談の実現に命運をかけています。国際社会が北朝鮮に対する監視を強める中、五輪を控えた今でなければ、文大統領は動きにくいはずだという計算もあったでしょう」

     ――北朝鮮が韓国に近づいた背景には制裁による国内の疲弊はあるのですか。

     「あると思います。最近、聞いた話ではスパイや反体制派の摘発を行う国家保衛省の人たちへの配給が2か月も滞っているとのことでした。一部の地域だけの話かどうかは調べてみなければわかりませんが、相当追い詰められているようです。韓国と対話をする中で、何か得られるのではないかという漠然とした期待があるのではないでしょうか」

    2018年02月01日 13時58分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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