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    健康

    この冬“猛威”「隠れインフルエンザ」の正体は?

    小児外科医 松永正訓
     北日本や日本海側を中心に厳しい寒さが続いたこの冬は、体調管理に苦労した人も多かったようだ。インフルエンザ患者数は統計開始以来、最多を記録し、猛威をふるった印象だ。その一方で、インフルエンザに対する警戒心の強さから「過剰反応」と言うべき動きも見られたという。小児外科医の松永正訓さんが解説する。

    「インフルエンザ」は何でも怖い?

     今年のインフルエンザの流行は、統計を取り始めた1999年以降、最大だそうです。

     この原稿を書いている時点で最新の厚生労働省の発表(2月9日)によると、全国の推計患者数は1月中旬から3週連続で過去最多を更新し、週に約282万人に達したそうです。そのうち105万人を、5歳から14歳の子どもたちが占めている、ということでした。

     私のクリニックは、特に患者が多いわけではありませんが、この時期は、1日に120人くらいの患者が来院することがあります。そのうち40人くらいがインフルエンザに感染していることもあります。私のような初老の医師にはちょっと(つら)い忙しさです。

     さて、今季の特徴は患者数の多さとともに、「隠れインフルエンザ」なるものが流行していることだそうです。隠れインフルエンザとは、一体何でしょうか? もちろん医学用語ではないので、正確な定義はありません。それなのに、医師の肩書を持つ人が「隠れインフルエンザ」などという言葉を使っている姿をテレビのニュースで見かけたりすると、見ているこちらの方が恥ずかしくなってしまいます。

     隠れインフルエンザとは、どうやら発熱があまりないインフルエンザのことを指しているようです。高齢者は免疫反応が強くないので、微熱のインフルエンザでも注意が必要な場合があります。しかし、それ以外の人においては、インフルエンザで微熱であれば軽症ということであり、つまり、大した病気ではないと考えてよい、ということです。

     どんな病気にも重症と軽症があります。私が専門にしている小児がんでも同じことです。全身の骨に腫瘍が転移した神経芽腫もあれば、転移もなく簡単に手術で摘出できる神経芽腫もあります。軽症のインフルエンザは今年だけの現象ではなく、私が開業医になった11年前からずっとあります。

    「隠れインフルエンザ」「流行」の実態

     「隠れインフルエンザ」という言葉を誰が言い出したのかは知りませんが、医療界からの発信ではないことは間違いないでしょう(少なくとも私はそう思いたいのです)。ところが、今や、ネット上は言うに及ばず、新聞のコラムにまで登場しています。

     今年はインフルエンザの流行を示す数字が顕著であることから、テレビのワイドショーやネットでインフルエンザが例年以上に話題になり、不安に駆られた人がクリニックを受診して、ごく軽症の人もインフルエンザと診断されている――。これが、隠れインフルエンザ“流行”の実態ではないでしょうか。

     そのうえ、「隠れインフルエンザ」という言葉まで「流行」し、念のための受診にさらに拍車がかかって患者数を増やすことにつながっている――そういう面は否定できないと思います。

     新聞紙面でも、感染症の専門家とされる医師が「早めの受診を」などと呼びかけているのを目にします。しかし、注意してほしいのは、「早め」にも限度があるということです。

    2018年02月20日 10時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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