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    スポーツ

    長時間練習…それでも体育会系指導が勝てないワケ

    帝京大ラグビー部監督 岩出雅之

    「スポーツ楽しむ」は勝利につながる

    • 平昌五輪の大舞台の試合中でも笑顔を絶やさなかった、カーリング女子代表
      平昌五輪の大舞台の試合中でも笑顔を絶やさなかった、カーリング女子代表

     とはいえ、競技スポーツはライバルと競い合い、最終的に上回ることを目指すものだ。そのためには厳しい練習で自らを鍛え、限界を超える努力を続けなければならないはず。「楽しむ」ことで本当に成果を出せるのだろうか。

     「抑圧的な指導をやめて分かったのは、選手は、自律的に始めたことにこそ充実感を感じ、没頭する。仲間と目標に向かっている一体感を得られれば、それが体力的、精神的にきついことであっても『楽しい』と感じて頑張ることができる、ということでした」

     平昌冬季五輪でカーリング女子日本代表は「スポーツを楽しむ」姿勢を見せながら、同種目ではわが国初のメダルを獲得した。「楽しむ」ことの効果は心理学的にも裏付けられているという。

     「人は好きなことを、夢中になって没頭して、楽しんでやっているときの集中力は高い。こうした状況は『フロー』と呼ばれ、最も良いパフォーマンスができるといわれています。だから、『スポーツを楽しむ』ことは上達や勝利につながりやすいのです」

     「アメリカの心理学者、エドワード・デシ氏らの研究でも『やること自体が楽しいから取り組む』という内側から湧き上がった動機は、最も力になるとされています。この研究では、『できないと罰を与える』『できたら報酬をあげる』という『アメとムチ』的な指導は、『やること自体が楽しい』という自律的な取り組みよりも、やる気を引き出す要素としての順位が低い、としています」

     この研究結果には二つの意味がある。「できないと罰を与える」といった体育会的な指導だけでなく、「褒めて伸ばす」型の指導法にも疑問を投げかけているのだ。

     「『アメ』も駄目なのかと意外に思われるかもしれません。アメリカの心理学者、マーク・レッパー氏らの実験ですが、絵を描くのが好きな園児に『上手に絵を描けたら賞状をあげる』『何もあげない』という条件を分けて比べてみると、何ももらえなかった園児は意欲に変化はありませんでしたが、賞状をもらった園児は『自律性が損なわれ、意欲が低下した』という結果になりました」

     「自分自身が楽しむために絵を描く行為が、報酬欲しさの『仕事』に変わってしまうと、自律性は失われます。心理学用語で『アンダーマイニング効果(基礎を掘り崩す)』といい、『褒めて伸ばす』ことにも注意が必要であることを示しています。上記の例では『うまく描けた』という結果だけを褒める(賞状を与える)と、『褒められたいから』という報酬への期待が生じてしまいます。この場合は、描くまでの『努力の過程』を褒めることが、自律性を損なわないやり方だとされているのです」

    2018年03月08日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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