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    国際

    4期目目前のプーチン氏、内と外で直面する難題

    公益財団法人「未来工学研究所」特別研究員 小泉悠

    対北朝鮮、影響力はほとんどない

     ――極東について、ロシアはどういう認識を持っているか。

     「ソ連が崩壊しても、極東では国境が変わらなかった。中国、ベトナム、ミャンマー、カンボジアといったアジアにおける社会主義陣営の友好国はみんな軟着陸に成功した。北朝鮮も軟着陸とはいえないまでも、『金王朝』はつぶれなかった。勢力圏の問題も、米国の軍事同盟拡大も起きなかった。ロシアの不満のタネは太平洋側にはない。

     今、朝鮮半島が問題になっているが、ロシアは1990年代、2000年代に生じた核危機の際もほとんど何もしてこなかった。朝鮮半島は基本的には勢力圏ではないと思っている。17年以降、ロシアが朝鮮半島に関心を持っているのは、北が米国に届くミサイル開発を進めていることで、これが地球規模の安全保障問題になってしまったこと、米露関係が悪化する中で、ロシアは米国に影響力を及ぼす『てこ』を持ちたいと思うようになったことが理由だ。

     米国にとって安全保障上、無視できない地域はロシアを除けば朝鮮半島と中東。その二つでロシアは影響力を持ち、制裁解除やNATOの不拡大を約束させる時に役立てたいと思っている。ただ、朝鮮半島問題でロシアに本当の影響力はない」

    4期目のプーチン大統領、優先課題は?

    • 昨年7月、G20サミットが開かれたドイツ・ハンブルクで、トランプ米大統領(右)と会談したプーチン大統領(AP)
      昨年7月、G20サミットが開かれたドイツ・ハンブルクで、トランプ米大統領(右)と会談したプーチン大統領(AP)

     ――プーチン大統領は3月18日の選挙で当選がほぼ確実だ。4期目の外交・安全保障の優先課題は何か。

     「西側との関係をどうするかが最優先課題であることは間違いない。トランプ米大統領は昨年8月、対露制裁強化法に署名した。議会の同意がなければ解除できないので、制裁の解除は簡単ではない。

     プーチン氏の次の任期6年では難しいかもしれないが、解除の道筋はつけたいと思っているだろう。しかし、東ドイツとソ連で国家の崩壊を目の当たりにしたプーチン氏は、性急な改革でめちゃくちゃになるより、ゆっくり衰退する方がまだましだと考えていると思う。制裁で締め上げられても、5年、10年と突っ張っていくのではないか。

     中東については、シリアが優先課題だが、これはシリアを『てこ』に米国との関係をどう変えていくかを考えるのであって、ロシアが中東秩序の大構想を持っているわけではない。メンツと中東でのプレゼンスを維持しながら、足抜けの道を探るのだと思う。

     難しいのは中国との関係で、中国の国力が大きくなっていく中で、中国の存在感が欧州を上回るかもしれない。そうなると中国は、これまで米国との関係次第で重要性が変わる『従属変数』だったが、これからは『独立変数』になるかもしれない」

    プロフィル
    小泉 悠( こいずみ・ゆう
     公益財団法人「未来工学研究所」特別研究員。早稲田大学社会科学部卒。同大学院政治学研究科修了。政治学修士。外務省専門分析員、ロシア科学アカデミー世界経済国際関係研究所(IMEMO RAN)客員研究員などを経て現職。専門はロシアの軍事・安全保障。主な著書に『軍事大国ロシア 新たな世界戦略と行動原理』(2016年、作品社)、『プーチンの国家戦略 岐路に立つ「強国」ロシア』(同、東京堂出版)などがある。

    2018年03月13日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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