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    働く

    うちの会社の営業トップは74歳

    読売新聞メディア局編集部 中根靖明

    中高年の人に向く「電話営業」

    • 宣通のオフィス。契約社員の多くは60代以上だ。
      宣通のオフィス。契約社員の多くは60代以上だ。

     契約社員の勤務時間は午前9時から午後5時まで。時間短縮勤務も選べるが、多くの人がフルタイムで働いている。50キロ以上離れた三重県内から通勤してくる人もいるそうだ。

     企画を練ったり、デザインや契約業務を担ったりは正社員の仕事で、電話営業の大半は契約社員が手掛けている。シニアの契約社員たちが、1日に100~200件の電話を営業先にかけ、セールスに励んでいるのだ。

     津田社長は「電話営業はシニアの人に向いている」と断言する。

     「シニアの人は多様な経験をされていて、話の引き出しがとても多いのです。大手機械メーカーの幹部だった人、五輪の代表に選出された人など、実に多士済々です。(電話の)相手は企業の責任者クラスの人ですから、若い人よりも年齢的に相性がよく、(電話という顔の見えないやり取りでも)説得力をもった話ができるのではないでしょうか」

    • 宣通が「自治体広告」のために配布したディスプレー(宣通提供)
      宣通が「自治体広告」のために配布したディスプレー(宣通提供)

     ただ、誠心誠意の売り込みが、徒労に終わることも少なくない営業の世界。主としてデスクワークとはいえ、働き盛りをとうに過ぎたシニアたちにとって、心身ともに「しんどい」と感じることもあるはずだ。何が彼らを仕事に向かわせるのだろうか。

     「企業の第一線で働いていた人も多いせいか、皆、とにかく『負けず嫌い』です。サラリーマン時代に相当の地位に就いていた人も多く、『生活に困って働いている』という人は少ないようです。『年を取っても社会参加している』という意識が、仕事への意欲につながっている部分があると思います。仕事を終えてから同僚と飲みに行く人たちもいて、時には新卒の社員を連れて行くこともあります。そういった楽しみもモチベーションになっているのかもしれません」

     「定年までずっと役所に勤務していた」という人が応募してきたこともあった。津田社長らは「さすがに営業は厳しいだろう」と懸念したが、思い切って採用したところ、心配とは裏腹に上手に企画を売り込み、成果を挙げたそうだ。

     こうした「多士済々」のシニア社員たちの中でも、抜きん出た存在の1人を津田社長が紹介してくれた。トップの営業成績を上げているという、現在同社では最高齢でもある74歳の男性だ。

    トップ営業マン、秘訣は「スピード重視」

     約10年前に入社してから営業成績は常に上位。平均すれば、1日2本程度の広告契約をコンスタントに獲得しているという。この男性が実績を上げると、「ほかの契約社員の闘争心にも火が付くようで、それが会社全体の勢いにつながるのです」(津田社長)。トレーニングで鍛えているので体が丈夫で胸板が厚く、「とても74歳には見えない」と評判だそうだ。

     実際に会ってみると、がっしりした体格と、全く(よど)みのない、ソフトな口調に驚かされた。確かに70代と言われても信じられない人も多いだろう。

     「74歳のトップ営業マン」は、38歳の筆者に営業のコツを伝授してくれた。「電話をかけて先方の責任者が不在だった場合、提案の概要を記した紙をファクスで送ったうえで、夕方までに再び電話して当日中に接触するよう努める」、「電話すべき顧客リストをいち早く消化できるよう、スピードも重視している」そうだ。以下は津田社長の“解説”だ。

     「人の気持ちは移ろいやすいもの。ファクスも次の日には処分されているケースもある。営業先の責任者の気が変わらないうち、とにかく早めにコンタクトを取ることが彼の『勝利の法則』なのではないでしょうか」

    2018年03月15日 10時32分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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