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介護と仕事の両立、危機を乗り切る「心の持ち方」

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介護者は誰からも守ってもらえない

家族の介護を行う人を支援するNPO法人てとりん(愛知県春日井市)のメンバーとともに
家族の介護を行う人を支援するNPO法人てとりん(愛知県春日井市)のメンバーとともに

 現在、要介護者を守る社会資源は介護者を含めてたくさんありますが、介護者自身を守るセーフティーネットは一切ありません。自分の人生は自分で守らなくてはいけません。特に私のような独身者は切実です。

 いざ介護が始まると、どうしても要介護者を軸に物事を考えがちです。私も、友達と旅行したり、夜に飲みに行ったりできるようになったのは、ここ2、3年のことです。目の前のことでいっぱいいっぱいで、遊びに行こうという気にもならなかった、ということもありますし、要介護者の母が「ご飯はレンジで温められるだろうか」「ゴミの日じゃないのにゴミ出しをしてしまうのではないか」などの心配ごとが多くて、自分の時間があまりなかったように思います。

 結果として、積もり積もったストレスが、母に対する攻撃という形で表れてしまったのも事実です。ですから、こういった苦い経験は皆さんにはしてほしくないのです。私の場合、このような状況から救ってくださったのは訪問看護師、ケアマネジャー、医師、介護者の先輩という存在と、彼らがそのたびに教えてくれた各種介護サービスでした。

 なので、今だから言えることなのですが、介護を始めることになったら、まずは自分の生活と要介護者の生活を切り離して環境整備をしましょう。要介護者のできることとできないことを正確に見極めます。できないことに対しては、介護サービスなどの社会資源からサポートを受けるのです。

 要介護者のサポートにあなた自身が加わってもいいでしょう。ただし、無理は禁物です。介護は素人が簡単にできることではありません。特に身体介護は技術が必要です。だからプロがいるのです。任せるところは任せるのも能力のうちです。

 介護者が常に考えなくてはいけないことは「私はどうしたいのか」ということです。それがわからないのであれば、誰かと話をするという方法があります。話をしていくうちに、自分がどうしたいのか気づくことがあるのです。

 介護をする人が自分から「わからない」「困っている」と声を上げない限り、誰も悩んでいることに気付いてくれません。そこは自助努力が必要です。助けてくれる人、寄り添ってくれる人は絶対にいます。誰に話せばいいか、どうしてもわからないのであれば、私に連絡をくださっても結構です。一緒に考えましょう。

介護者同士のつながり、経験の継承を

 介護はきれいごとではすみません。嫌なこともたくさんあります。ストレスもたまります。時には悪態もつきたくなります。そんな時は吐き出すことも必要です。前に進めない時は、抱えているもやもや、イライラを発散させます。ただし、発散する相手と場所だけは選ぶ必要があります。要介護者に向けてしまったら、「虐待」になりかねません。それでは悲しすぎます。

 そういう時、私はSNSなどで発散したり、介護者の先輩に泣きながら電話したり、訪問看護師とメッセージ交換したりしてなだめてもらっています。

 愛する人、大切な人が今までと違う姿になったのは、誰のせいでもありません。愚痴や悪態を吐き出したい時は、勇気を出して介護者が集まる会に足を運んでほしいと思います。介護経験者であれば、そのストレスをきっとわかって受け止めてくれます。

 うまくできない介護や、介護サービスを利用して自分が直接かかわっていない状況に、自責の念を感じる方も少なくありません。そんな方に私は言いたいです「あなたは十分、愛のある介護をしています」と。身体介護だけが介護ではありません。お金を出すだけだって、気持ちを寄せるだけだって立派な介護です。要介護者のことを考えているから自責の念にさいなまれるのです。その気持ちは要介護者への愛以外の何物でもありません。

 そうした人には「それでいいんだよ」「あなたは一人じゃない。私たちがいます」と言いたいです。私が介護者の先輩方にそう言ってもらったことが、どれだけ心の支えになったことか。介護者同士がつながり、経験を受け継いでいくことで、介護離職を未然に防ぐことができると信じています。

プロフィル
和氣 美枝(わき・みえ)
 1971年、埼玉県生まれ。大学を卒業後、マンションデベロッパー業界で働く。32歳の時、母親の介護が必要となり、手探り状態で介護を始めたものの自暴自棄となる。38歳の時に離職。40歳の時に介護者支援団体「NPO法人介護者サポートネットワークセンター・アラジン」の存在を知り、立ち直る。2014年にワーク&ケアバランス研究所を立ち上げ、その後、16年に一般社団法人「介護離職防止対策促進機構」を設立、代表理事となる。18年3月、『仕事と介護の両立をサポート! 介護に直面した従業員に人事労務担当者ができるアドバイス』(第一法規)を出版。

問い合わせは

介護離職防止対策促進機構

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13905 0 深読み 2018/03/22 10:55:00 2018/03/22 10:55:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180320-OYT8I50055-1.jpg?type=thumbnail

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