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    自動車

    トヨタ離れ?ライバルVWと手を組む日野の道理

    モータージャーナリスト 御堀直嗣

    EV化へ日野の気概

    • 提携を発表した日野自動車の下社長(左)とフォルクスワーゲントラックアンドバスのレンシュラー最高経営責任者(2018年4月12日)
      提携を発表した日野自動車の下社長(左)とフォルクスワーゲントラックアンドバスのレンシュラー最高経営責任者(2018年4月12日)

     2017年に日野の社長に就任した下氏は、16年ぶりとなる生え抜きである。

     EVシフトの開発競争が激化するとともに、トヨタに先駆けてハイブリッドトラックを世に出した日野の気概が、EVトラックの取り組みを意欲的にさせたのではないだろうか。

     一方のVWは、すでにリチウムイオンバッテリーを使ったe-GOLFの発売を始めている。韓国や中国なども含め、リチウムイオンバッテリーを仕入れる段取りは戦略的に進めているはずである。

     EVの鍵は、なんといってもリチウムイオンバッテリーが握る。今後世界の自動車メーカーが電動化を進める中で、いかに性能と信頼性の高いリチウムイオンバッテリーを大量かつ安定的に仕入れる道を確保できるかが勝敗を分ける。

     そこに日野がVWと手を結ぶ利点はある。では、VWトラック&バスにとって、日野と手を結ぶ利点はどこにあるのだろう。

    乗用車と異なる開発プロセス

     日野は、2000年代に入り、予防安全技術の開発を加速させた。

     背景にあったのは、03年に多発した大型トラックの高速道路事故である。同年6~7月の相次ぐトラック事故で死傷者が急増した。

     そして、日野は06年に商用車として世界初となる被害軽減ブレーキシステムを発売する。国土交通省が推進してきた先進安全自動車(ASV)推進計画に参画し、00年から、追突被害軽減ブレーキシステム(プリクラッシュセーフティ)の実用化に6年の歳月をかけてきた。

     大型トラック・バスの運転支援に基づく予防安全技術は、乗用車で用いられるセンサーなどの部品を基に開発されている。乗用車の方が販売台数は圧倒的に多いため、部品調達コストの点で優れているからだ。

     車体寸法の異なる乗用車と大型商用車では制御システムがまったく違う。荷物を積載したときと空荷の時では、車両重量が2~3倍もトラックは異なる。またトラック用のタイヤは、乗用車用に比べグリップ力(路面をつかむ力)が低いため、ブレーキをより早くかけ始めないと止まりきれない。

     しかし、車両が重く、タイヤのグリップ力が低いからといって、まだ危険と判断しにくい状況で早めにブレーキをかけ始めては、不要な減速となり、後続車の追突を誘発しかねない。逆に、空荷で車両重量が軽い時に強いブレーキがかかれば、急ブレーキのような状態になり、これも後続車に影響を及ぼす可能性がある。

     「運行状況(積載荷物の有無)や交通状況の兼ね合いをはかりながら、適切な制御ができる自動ブレーキの作り込みが大型車専用に必要になる。その完成度を高めるには、愚直に走行試験を重ねるしかない」(日野自動車の開発担当者)

     その結果、大型商用車の安全装備は、部品が乗用車と共用であっても開発原価が高くつくことになる。

    2018年04月19日 07時55分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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