究極の優良品種を生む?ゲノム編集の可能性と課題

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成長の「遺伝的天井」を取っ払う

野外栽培したゲノム編集イネの収穫作業(茨城県つくば市で2017年10月撮影)
野外栽培したゲノム編集イネの収穫作業(茨城県つくば市で2017年10月撮影)

 イネでも研究が進んでいる。ゲノム編集イネの研究は、昨年から野外栽培が始まり、昨秋には初の収穫も終えている。イネ育種の究極の目標は、冷害や病気などの逆境に強く、味が良くてたくさん()れる品種を作ることだ。そのための基礎的な研究として、政府系研究機関である農業・食品産業技術総合研究機構(茨城県つくば市)などの研究チームは、手始めに飼料用米で研究を始めた。

 (もみ)の数の多寡を決定づける遺伝子と、米粒の大きさにかかわる遺伝子に狙いを定め、ゲノム編集で働きを抑える。こうすることで、籾の数や大きさを左右する遺伝的な「天井」を取っ払い、収量を増やす。10アール当たりの収量は通常の飼料米が現状0・8トン程度だが、研究チームはこれを1・2トン以上にまで高める目標を立てている。昨秋に収穫したイネは、穂についた枝の数が通常栽培のイネより増え、結果的に籾数も増えて、研究チームの期待するような傾向がうかがえるという。

「品種改良」究極ツールへの期待

 このほか、野菜の栄養組成を変えて、ある特定の成分を増やす研究もある。例えば、血圧の上昇を抑制する効果やリラックス効果のある「GABA」という物質を増やしたゲノム編集トマトは、日本オリジナルのゲノム編集作物としてマーケットに投入される最初の商品になるのではないかといわれている。

 ゲノム編集を応用すれば、理論上、健康を増進させ、病気の予防につながる成分をたくさん含んだ農水産物を作ることができる。そうした意味で、「血圧を下げるトマト」の開発は序の口だ。考えてほしい。「これを食べたら認知症が予防できます」という野菜があったら、消費者にとって大きな魅力になるだろう。ゲノム編集は、「究極の優良品種」を生み出す可能性を秘めた技術だと言える。

 私たち人間は、長年にわたって品種改良に取り組んできた。「味が良い」「サイズが大きい」といった人間にとって望ましい特徴を農水産物に持たせるには、交配実験が欠かせない。従来型の品種改良は、数え切れないほどの交配実験を繰り返した結果、偶然に優良品種が見いだされることからスタートする。それをさらに長い年月をかけて育て、選抜し、さらなる改良を行う。実に気の長い作業だった。それがゲノム編集技術を使うと、狙った遺伝子の働きをコントロールできるので、「短期間で」「コストをかけずに」優良品種を生み出す道が開ける。従来型の技術で10年かかっていた品種改良なら、5年で済むという見方もある。ゲノム編集による「品種改良革命」への期待が高まっていると言えるだろう。

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20109 0 深読み 2018/05/01 12:00:00 2018/05/01 12:00:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180427-OYT8I50061-T.jpg?type=thumbnail

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