秋田「人食いグマ」3頭生存か 他の5地域も警戒を

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「気性の激しい雌グマ」の生存を確認

 現地で追跡調査を続け、17年秋の段階で、大きな赤毛の雌グマの生存を確認している。同年7月30日から8月5日まで田代平の南端地域でしばしば目撃し、9月27日にも目撃している。赤毛は10歳以上の高齢の雌グマにみられる特徴で、外見から老齢化が進んでいるように見受けられた。今年春に出産したとすると、高齢個体であり、消耗している。過去の殺害・食害経験がよみがえり、人を襲うかもしれない。危険な状況だ。

3頭の中で最も危険だとみられる110センチの雄グマ。額の左側に古傷がある(2017年7月8日、田代平で撮影)=日本ツキノワグマ研究所提供
3頭の中で最も危険だとみられる110センチの雄グマ。額の左側に古傷がある(2017年7月8日、田代平で撮影)=日本ツキノワグマ研究所提供

 さらに、第3現場(5月30日)と第4現場で食害し、他に3人を襲って2人に軽傷を負わせた体長90センチの雄グマは、17年秋まで、田代平の北部と、隣接する青森県新郷村迷ヶ平(まよがたい)の間にあるキャンプ場や駐車場など、人の出入りが多い場所にもしばしば現れた。毛の艶も良く、すこぶる健康そうだった。最後に目撃した時点で、体長110センチほどに成長していた。額の左側に古傷のあるこの雄グマが、3頭の中で最も危険なクマだと私は考えている。

 また、第3現場で食害し、6月30日に男性に重傷を負わせた「気性の激しい雌グマ」は生き残った。私は今年の4月24日に田代平で、放置されていた生の大豆を食べている様子を実際に観察した。

 「気性の激しい雌グマ」については今年も生存を確認したが、大きな赤毛グマ(スーパーKの母親)と額の左側に古傷のある雄グマについては昨年の秋以降、目撃していない。が、駆除(捕殺)されたという話は聞いていないので、生き延びた可能性は高い。今年も厳重な警戒が必要だ。

大規模な大豆、ソバ、コムギ畑の出現

 この地域で、なぜ、あのような重大事件が発生したのか。主な原因として、〈1〉13年と15年にドングリ類が豊作で、クマの出産が進み、一時的に子連れの母グマや子別れ直後の若いクマが多くなった〈2〉事件の3年ほど前からタケノコ(ネマガリダケ)が不作で買い取り価格が上昇し、採取者が増加していた〈3〉酪農家の減少とともに、跡地利用のため事件の7年ほど前から、この地域に大豆、ソバ、コムギの畑が大規模に出現していた――ことがあげられる。

 特に問題となるのは、〈3〉の大規模な大豆、ソバ、コムギ畑の出現だ。クマたちが大豆やソバ、コムギに依存し、一年中、同地に居ついて離れない状況になっていた。クマは容易に餌が取れる場所にとどまる性質がある。この地でクマたちは、4月中ごろの越冬終了後から木々の葉芽や花芽を食べ、雪解けの早い斜面や沢筋などで草の若葉を採食する。5月半ばから6月中ごろまではタケノコを食べ、その後、クワの実やヤマザクラの実を食べる。7月10日ころから大豆の若葉や花芽を食べはじめ、8月半ばまで続く。その間、ソバの花芽やムギも食べ、8月末からはシウリザクラの実やドングリ類を採食する。

大豆を食べる「気性の激しい雌グマ」。月の輪模様の左側が通常より40%ほど短い(2018年4月24日、田代平で撮影)=日本ツキノワグマ研究所提供
大豆を食べる「気性の激しい雌グマ」。月の輪模様の左側が通常より40%ほど短い(2018年4月24日、田代平で撮影)=日本ツキノワグマ研究所提供

 問題は、9月中ごろから大豆畑にクマの足跡が増える点だ。収穫期に規格外の小さい豆は畑に大量に捨てられるため、多くの動物を養っている可能性がある。ただ、「生の大豆」には有害成分が含まれているため、クマたちが実際に食べているのかどうか、追跡して調べてみた。

 16年と17年の秋には、その様子は観察できなかったが、18年4月24日に田代平で、生大豆の山の前に座って豆を食べているクマを発見し、30メートルまで接近して撮影することができた。このクマには胸の月の輪模様の左側が通常より40%ほど短いという特徴があり、気性の激しいあの雌グマだとわかった。秋に硬い生大豆を食うのではなく、春に水分を吸って「ふやけて膨れた」生大豆を食べていたのだ。

 この豆は水分にさらされ、有害成分が減少しているのかもしれない。このクマたちは一年中、この地域から離れずに暮らしているのだ。

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21312 0 深読み 2018/05/11 15:00:00 2019/01/22 16:05:13 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180511-OYT8I50003-T.jpg?type=thumbnail

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