「大国外交」のツケを払わされる中国・習近平政権

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米朝首脳会談に期待と不安

 ――史上初の米朝首脳会談が6月12日にシンガポールで開かれる。中国にとって最善のシナリオ、最悪のシナリオとは?

 「中国にとって最良のシナリオは、米朝の急接近を食い止め、米国と北朝鮮の間に楔(くさび)を打ち込むこと。そして、今のような体制が緩衝地帯として残ってくれることだ。もちろん、今のように重油も貿易も中国に頼るという状況が続かないことはわかっている。韓国や日本からもお金を入れたいだろう。中国に100%依存しなくても、ある程度、頼りにしてくれれば、口を出すこともできる。

 最悪のシナリオは、北朝鮮が親米国家になること。中国が憎い、怖い。米国と仲良くなるメリットが大きいと考えた場合は、米国の側についてしまうだろう。だが中国は、おそらくそれはないだろうと見ている。金正恩委員長はトランプ大統領を信じきれない。イラン核合意のように、一度決まったものをあっさり引っくり返すこともある。トランプ大統領がやったことは、北朝鮮を中国の側に押しやる効果がある。中国にとってはありがたい。これで楔を打ち込めたと思うだろう。

 そもそも、中国は北朝鮮が完全に米国につくとは思っていない。夷をもって夷を制する国であることはわかっている。だから、『どうせ行きはしない。制裁を緩める、体制を守ってくれ。この二つを取りたいだけだろう』と見切ってはいるのだが、それでもまだ一抹の不安を感じている」

 

 ――朝鮮半島の非核化、中国はどれだけ本気で考えているのか。

 「中国が米国と同じように完全、検証可能、かつ不可逆的な非核化を要求したらどうなるか。これはありえないですよ。なぜかというと、やはり運命共同体だからだ。

 南北を隔てる軍事境界線から北が北朝鮮で、中国から見ると緩衝地帯、車でいえばバンパーみたいなものだ。米中関係が悪くなってくると、より重要になる。境界線の向こうには在韓米軍がいる。軍事境界線は軍事的な境界線であるだけでなく、民主主義の境界線でもある。中国や北朝鮮が本当に怖がっていることは国民が自由に目覚めることだ。

 中国は北朝鮮がすでに核を持っているなら、完全に手放せということはできないだろうと考えている。過去に自分たちもそれをやった。核を保有した後にニクソン大統領と握手した。だからこれは仕方ないと。その代わり、こちらには撃つなと。これが多分、中国の本音ではないかと思う。だから、本気で非核化とは言っていない。段階的非核化というのは、先延ばしということでもある」

 

 ――朝鮮半島の非核化が実現する方向となれば、同時に朝鮮戦争の終結宣言および平和協定の締結も現実味を帯びてくる。中国はこのプロセスに関与できるか。

 「終戦宣言は南北でやるにしても、平和協定は中国も戦争の当事者だったので呼ばれないわけはないと思う。それに向けて中国も一挙に表に出始めて、自分も関わっているということをアピールしている。大連で中朝首脳会談があった後、習主席がトランプ大統領と電話会談をしたのも、そういう意味だ。中国が指をくわえて見ているだけでは、国民にも示しがつかない。

 中国をこれだけ翻弄する金正恩委員長は、いろんな意味でニューリーダーといえる。自分は直接欧米とやれるという感覚を持っている。習主席からすれば、やりにくい相手であるかもしれない」

プロフィル
興梠 一郎( こうろぎ・いちろう
 神田外語大教授。1959年生まれ。専門は現代中国論。主な著書に『中国 巨大国家の底流』(文藝春秋)、『中国激流 13億のゆくえ』(岩波書店)などがある。

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