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訪日する中国人が年間700万人を超え、ディープな日本を知りたがる人が増えている。日本以上にソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)が普及している中国では、個人が発信主体となる「自媒体(セルフメディア)」が花盛り。「網紅 」と呼ばれるネット上の有名人も続々誕生している。日本の企業もそうした人たちの影響力に目を付け始めたが、単純に「自媒体」任せではうまくいかないようだ。どうすれば目の肥えた中国人消費者の心をとらえられるのか。北海道大学公共政策大学院公共政策学研究センター研究員の西本紫乃さんに寄稿してもらった。
日本人のホンネ、動画で紹介

「日本の女子高生は冬でもスカート、生足で寒くないの?」
冬でもスカートに生足の日本女性のファッションは、多くの中国人にとって不思議なもののようだ。中国の動画共有サイト「bilibili(ビリビリ)」のアカウント「納尼Video」は、中国の10~20代の若者向けに、中国人が日本について感じている疑問や知りたいことに応える「ミニ調査」動画を作製し、公開している。
動画を制作する上海出身の
これまでに公開した動画は50本以上。日本人が語るホンネが紹介されている。
「どのメーカーの化粧品を使っていますか?」「女子から告白するのってあり?」「彼氏の身長はどのくらいが理想?」などと、質問は他愛のないものだが、いずれも再生回数が数万回、最近では数十万回に達している。日本に興味を持つ中国の若い世代の関心を引いていることがうかがえる。
賈ユンさんのもとには「日本人は朝ごはんに何を食べているの?」といった素朴な質問も寄せられるという。
中国で広がった「熊本加油!」の輪

個人が発信する日本情報が、中国人の日本に対する関心や感情を刺激する。こうした現象は数年前から顕著になっている。2016年4月に起きた熊本地震の際には、日本からの積極的な情報発信が、中国の「熊本加油(頑張れ)!」という被災者への励ましにつながった。
この時の「熊本加油!」盛り上がりのきっかけを作ったのは、「日本語お兄さん」の愛称で呼ばれ、2011年から中国のSNS「微博(ウェイボー)」上で、中国の日本語学習者向けに情報発信をしている井餘田泰斗さん(FindJapan株式会社マーケティングディレクター、中国デジタルマーケター育成機関「微博LABO」塾長)だった。
地震発生直後から井餘田さんのもとには、中国から「東京に行く予定だが、東京は大丈夫か?」などの問い合わせが相次いだ。風評で日本渡航をキャンセルする人が増えるのを食い止めるために、被災地や日本の情報を伝える必要を感じた井餘田さんは、実際に熊本に足を運び、熊本大学の中国人留学生らと協力して現地の実際の様子を動画で伝えた。
この時、井餘田さんが開設したハッシュタグページ「#熊本加油#」が中国で拡散し、中国でも熊本を応援するムードが広がったのだった。

