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    国際

    米朝首脳会談、北朝鮮のワナにかからないためには

    龍谷大学教授 李相哲

    「体制保証」の名の下の脅し

    • 5月17日、米ホワイトハウスで、記者団の取材に応じるトランプ大統領(AP)
      5月17日、米ホワイトハウスで、記者団の取材に応じるトランプ大統領(AP)

    ――米朝首脳会談への不参加をにおわせる談話を発表した北朝鮮に対し、トランプ大統領は北朝鮮が非核化要求に応じれば、体制保証を与える考えを示した。これをどうとらえるべきか。

     「北朝鮮の体制は、首領が唯一の体制、すなわち金正恩委員長一人のための体制であることをトランプ大統領も理解しているはずだ。体制保証とは『金正恩体制』の保証にほかならないが、取りようによっては『会談に応じ、アメリカの非核化要求をのまなければ、金正恩委員長の命は保証しない』という意味にもなるので、脅しでもある。金正恩委員長をあやしてでも、脅してでもいいから会談の場に引きずり出そうという戦術ではないか。

     しかも、トランプ大統領の発言は文脈を考える必要がある。トランプ大統領の発言は北朝鮮非核化のための方式、すなわち『リビア方式』に言及する部分で出てきた発言だ。

     トランプ大統領はこう言った。『リビアは完全に焦土化された。我々はリビアに対しては(最高指導者の)カダフィ氏を保護するいかなる合意もしていない』。この部分ではリビア方式を否定しているが、同時に『米朝首脳会談で合意できなかった場合、北朝鮮もそのようなモデル(リビアのカダフィ氏のような末路)になるはずだ』とも言っている。事実上、最後通牒(つうちょう)を突き付けた形だ。

     ただ、『完全な非核化』を条件に挙げてはいるものの、米国の大統領が北朝鮮の『体制保証』を口にしたことは憂慮すべきことだ。北朝鮮を会談場に引きずりだす戦略と言っても、『米国は譲歩する用意がある』という誤ったシグナルを北朝鮮に送ってしまう可能性もある」

    米朝首脳会談は予定通り開催か

    • 米朝首脳会談が開かれるシンガポール(AP)
      米朝首脳会談が開かれるシンガポール(AP)

    ――米朝首脳会談は予定通り行われると思うか。

     「今のところは、行われる可能性が高いと思う。トランプ大統領が言っているように、米国は金正恩氏の口から非核化について何も聞いていない。トランプ氏の哲学からすると、必ず本人から聞きたいと思うだろう。

     逃げ道のない合意をしておけば、違反した場合に何か行動を起こす口実ができる。今の時代、そういうステップを経ることなく北朝鮮に何か一方的なことをするのは難しい。とにかく会って何らかの文書を作り、そこで北朝鮮が違反した場合にはじめて米国は次のステップに行ける。アメリカにとってもこれは必要な手続きではないかと思う。

     一方、北朝鮮からすると、今、口実を見つけてトランプ大統領に会わないと言ってしまうと、やはり北朝鮮の非核化の意思はうそだったということになる。だから、金正恩氏は会うのではないか。

     ただ、シンガポールまで行くのは気乗りがしないかもしれない。移動の飛行機が万全ではないし、世界のメディアの前で自分をさらけ出した時に何が起きるかわからない。身長190センチのトランプ大統領と並ぶと、これまでのイメージが崩れてしまうかもしれない。シンガポールに出て行く決定をした時点で、北朝鮮は本気を出したなと思ったが、金正恩氏は今、葛藤を抱えているのではないか」

    2018年05月21日 12時37分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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