次の産業革命へ、勢いがある中国とのんびり日本
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ヨーロッパの需要を狙う成都

成都双流国際空港には、プライベートジェット「ガルフストリームG650」が十数機も駐機していた。ビジネス需要が多いのだろう。
“世界一のショッピングセンター”と紹介された「ニュー・センチュリー・グローバル・センター(新世紀環球中心)」も威容を誇っていた。広さ176万平方メートル。世界最大のオフィスビルとされる米国防総省(ペンタゴン)の3倍、豪シドニーのオペラハウスが20棟入るという建物内は、海洋楽園(プール)、五つ星のホテルもある。
2018年には、世界各地で高さ200メートル以上の超高層ビルが230棟建つ。そのうちの6割、130棟が中国で建設される。成都では上海タワーの632メートルを超える677メートルの超高層ビルが計画中だ。
シンポジウム主催者の一人、西南財経大学の湯継強教授は「一帯一路の北の玄関口が西安。南の玄関口がここ、成都です」と胸を張った。
中国は今、ヨーロッパを向いている。21世紀のシルクロードとも言われる「一帯一路」。陸路は、ユーラシアを横断する連絡鉄道で中国の中西部から中央アジア、ヨーロッパを結ぶ。ポーランドなどの東ヨーロッパ、中央アジアの需要を安い中国製品で取り込み、輸出するとともに、ドイツの安全・安心な商品、技術を輸入するという循環である。ドイツでは紙おむつが中国の爆買いで不足し、中国企業のM&Aを懸念する声がある。
パンダの里からIoTの拠点へ

湯教授は、成都の街づくりについてこんなエピソードを紹介してくれた。
「2か月前、習近平国家主席が成都を訪れました。四川省、成都は、内陸部にあり、防御に強いということで、軍需産業が主力でした。航空機のエンジンなどを造っています。だが、これからはIoTです。頭脳労働の集積地にするためには、環境のいい公園都市にしなければなりません。習主席は『都市の中に公園をつくるのでなく、公園の中に都市を造れ』と言われました」
かつて、中国は旧ソ連との軍事衝突に備え、国防上有利な四川省、重慶などの内陸部に軍需産業、重工業、発電所を集中的に造った。これを「三線建設」という。ちなみに、上海などの沿岸部を第一線。その西方、毛沢東の故郷、湖南省などが第二線である。軍需産業の基盤から、テレビメーカーとして知られる「長虹電子グループ」などが四川省から生まれた。
「第三次産業革命ではすべてが再定義される。特に、同じ航空機エンジンを造っているGEがインダストリー・インターネットとして第三次産業革命に備えているという嶋先生の話を聞いて、ぜひ、四川で講演してもらいたいと思った」と、湯教授は語った。
インターネットは元々、軍事技術であったものが、冷戦の終結によって米国防総省をスピンアウトした技術者が主導して開発したものだ。そう考えると、四川省がパンダの里からIoT時代の大きなイノベーションの拠点に変わるかもしれないという予感を持った。