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ギター市場を先導

まず、ギブソンの歴史について振り返ってみたい。
ギブソンは1902年、創業者のオービル・ギブソンによって、アコースティック・ギターやマンドリンなどを製造・販売する会社として設立された(なお、創業自体は1894年である)。
1935年には、ギブソン初のエレキギター「EH-150」、翌年に「ES-150」を発売。続けて「ソリッドボディー」と呼ばれる、ボディーの内側に空洞がないエレキギターの開発に着手した。
そして52年には、米国の人気ギタリスト、レス・ポールとともに開発した、ソリッドボディーを持つ「レスポール」を、満を持して世に送り出したのだった。
このレスポール、丸みを帯びた美しいボディーなどが人気を呼び、ギブソンの「代名詞」となった。また、1946年に設立された米フェンダー社(以下、フェンダー)の「ストラトキャスター」「テレキャスター」とともに、エレキギターの定番として並び称される存在に成長した。
さらに、ギブソンは独特の形状を持つ「エクスプローラー」やフライングV、レスポールの後継とされたSGなどの人気モデルを次々に発売、世界のギターメーカーをリードする存在となった。
ギブソン破綻の理由
米ウォール・ストリート・ジャーナルによると、ギブソンは世界のエレキギター市場で売上総額の5分の1以上のシェア(占有率)を握る。中でも、2000ドル(約22万円)を超える高価格帯の高級エレキギター市場に限れば、シェアは40%以上に達し、圧倒的な人気を得ている、と言えそうだ。
このように、一見すると好調のようにも見えるギブソン。しかし、なぜ経営破綻に追い込まれたのか。
直接的な原因の一つには、次々とM&A(企業の合併・買収)などに踏み切ったことがある。特に、2013年、ギブソン・ギター(Gibson Guitar Corp.)からギブソン・ブランズ(Gibson Brands Inc.)へと社名を変更する前後から、その動きが活発化した。
12年に日本の老舗音響機器メーカー、オンキヨーと資本・業務提携すると、翌年、同じく日本の音響・情報機器メーカー、ティアックを傘下に収めた。さらに、14年にはオランダの大手電機メーカー、フィリップス傘下でオーディオなどを手掛け、ヨーロッパや中国、南米などで販売実績のある「WOOX Innovations」を1億3500万ドル(約148億円)で買収した。
レコード・CDプレーヤーやスピーカーなどのオーディオ機器を手掛ける企業と提携したり、傘下に収めたりすることによって、一ギターメーカーから脱皮し「世界最大の音楽・音響テクノロジー企業になる」という狙いがあったのだろう。
しかし、買収・提携した企業の多くは業績不振が続いて、ギブソン全体の組織の弱体化だけが進み、狙いは外れた。その後、オンキヨーとの提携を解消し、保有していた株式を売却するなど、大規模なリストラや複数の事業の整理を断行したが、巨額の負債は解消できなかったようだ。