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    科学

    世界最強ランナーが愛飲する「赤いジュース」の秘密

    読売新聞調査研究本部主任研究員 芝田裕一
     「世界最強のマラソンランナー」と言われるケニアのエリウド・キプチョゲ選手(33)をご存じだろうか? 彼は大切なレースのスタート前に、「ビートルート」という赤い野菜の汁を濃縮したジュースを必ず飲んでいる。そして今、このジュースには「ランナーの持久力に影響を与える成分が含まれている」とする研究成果が相次いで発表され、スポーツ医学や生理学の専門家らの注目を集めている。ランナーの大きな力となる可能性を秘めた「赤いジュース」のサイエンスに迫った。

    ロンドンマラソン3度優勝のキプチョゲ選手

     キプチョゲ選手のマラソンのベスト記録は2時間3分5秒(世界第4位)で、世界記録保持者ではないが、レースにはめっぽう強い。2013年の独ハンブルクマラソン以来、フルマラソンの大会に10回出場して9回優勝している。うち1回は16年のリオ五輪で、見事に金メダルを獲得した同選手の雄姿をご記憶の読者も多いだろう。このほか、ロンドンマラソンなど各国の強豪が集うワールドメジャーズ(世界6大大会)でも6回の優勝を記録。今年4月に行われたロンドンマラソンでは3度目の優勝を果たしている。

    • F1コースを走るエリウド・キプチョゲ選手(中央)
      F1コースを走るエリウド・キプチョゲ選手(中央)

     キプチョゲ選手の名をさらに高めたのが、昨年5月に米国のスポーツ用品大手ナイキ社が開催した「ブレーキング2」というプロジェクトだ。マラソンで「夢の記録」と言われる2時間切りを目指す試みで、100人のトップ選手の中から選ばれた3人のランナーが参加し、イタリア・モンツァのF1サーキットコースを会場にして人間の限界に挑むマラソン・レースが展開された。

     このレースでキプチョゲ選手は、交代で走るペースメーカーたちに引っ張られながら2時間25秒という高速タイムで42.195キロ・メートルを駆け抜けた。ペースメーカーの交代や給水方法などが国際陸上競技連盟の認定条件を満たさないために公認記録とはならなかったが、デニス・キメット選手(ケニア)が14年にベルリンマラソンで打ち立てた世界記録(2時間2分57秒)より2分32秒も速く、2時間切りまであと26秒に迫る驚異のタイムだった。

     キプチョゲ選手の強さの秘密はどこにあるのか? 「一流選手を輩出しているケニア・ナンディ地区の出身で、『高速の遺伝子』を受け継いでいる」「非舗装の高原で行う高地トレーニングの効果だ」「エネルギーのロスが少なく『燃費』の良いランニングフォームを身につけている」……。さまざまな要素が指摘される中、意外とも言える事実が明らかにされた。それが、ビートルート・ジュースの存在だ。今年3月31日、茨城県つくば市で開かれた第30回ランニング学会大会(大会長=鍋倉賢治・筑波大学教授)でのことだ。

    2018年06月18日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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