文字サイズ
    スポーツ

    混戦必至の男子100m…陸上日本選手権を展望する

    読売新聞運動部 西口大地
     陸上競技の日本一を争う日本選手権が22日、山口市の維新みらいふスタジアムで開幕する。昨秋、桐生祥秀が日本人初の「9秒台」をマークした男子100メートルは、実力伯仲のハイレベルな一戦になることは間違いない。日本陸連科学委員会のデータ分析や、選手、関係者のコメントを基に、激戦必至のレースを展望する。

    桐生の9秒台は「追い風+底力」があったから

    • 桐生が昨年マークした9秒台は「底力」があったからこそ(2017年9月9日、吉野拓也撮影)
      桐生が昨年マークした9秒台は「底力」があったからこそ(2017年9月9日、吉野拓也撮影)

     まずは、桐生が9秒98の日本新記録を樹立した昨年9月9日の日本学生対校選手権(日本インカレ)決勝の走りを、データの観点から改めてひもといてみよう。

     科学委員会は過去の国内外のレース分析に基づき、100メートルの記録を伸ばすには、「最高速度」が最も重要な要素と分析。10秒の壁を破るには、最低でも秒速11.6メートルの最高速度が必要という指標を示してきた。

     この日は追い風1.8メートルの好条件だったこともあり、桐生は秒速11.67メートルの最高速度を記録、9秒台達成ラインの条件を満たした。

     加えて、これまでと大きく異なったのが、最高速度の出現位置だ。どちらかと言えば前半からガツンとスピードを上げて、55メートル付近で最高速度が出現するのが従来のパターンだったが、この日は10メートルも先の65メートル付近でマークしている。

     桐生には大会前に痛めた左太もも裏に不安があり、スタートの出力を抑えたことが一因と見られるが、結果的に課題だった後半の失速が軽減され、9秒台の快挙に結びついた。

     では、この走り方が桐生にとって理想のモデルになるかといえば、一概には言えない部分がある。

     科学委員の小林海さんによれば、最高速度出現位置などは、通常の桐生のデータからみれば異例といい、「やっぱり、風の影響はあったと思う」と指摘した。

     一方で小林さんは、「9秒台を出す下地、前提条件は整っていた」と強調する。その根拠として示したデータが、京都・洛南高3年時に10秒01をマークして注目を集めた2013年から昨年までの5年間における、各年のベストタイム上位3レースの変遷だ。

     13年は2番目、3番目の記録が10秒17、10秒19で、10秒01の1レースのみが飛び抜けていた。翌年、東洋大に進み、自己ベストの更新こそ4年かかったが、タイムの平均値は着実に向上していた。17年は9秒98に続く記録が2度の10秒04で、3レースの平均値は10秒02にまで達していた。

     小林さんは「(日本インカレは)条件の良さだけでなく、何度走っても好記録を出せる底力があったから、結果的にあそこで9秒台につながった」とみている。

    2018年06月21日 10時44分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
    PR
    今週のPICK UP
    PR
    今週のPICK UP