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    国際

    一帯一路に背を向けるインド、中国との雪解けは本物か

    住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリスト 石井順也
     最近、関係改善の兆しを見せていた中国とインドだが、今月9、10の両日、中国・青島で開かれた上海協力機構(SCO)の首脳会議では、それぞれの立場に埋めがたい溝があることも明らかになった。「アメリカ・ファースト」の道を突き進む米国に対し、中国はインドなどを巻き込んで対抗軸を作ろうとしているが、必ずしもうまくいっていない。そうしたことも中国と他の国々の同床異夢の背景にあるようだ。変わりゆく国際関係を住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリストの石井順也さんに読み解いてもらった。

    関係改善に動き出した中国とインド

    • 中国の青島に到着し、手を振るインドのモディ首相。冷え込んでいた中印関係に変化の兆しが生まれている(6月9日撮影)=ロイター
      中国の青島に到着し、手を振るインドのモディ首相。冷え込んでいた中印関係に変化の兆しが生まれている(6月9日撮影)=ロイター

     今年のSCO首脳会議はいろいろな意味で注目を集めた。採択された「青島宣言」は、反保護主義、イラン核合意、朝鮮半島の非核化、シリア情勢、反テロから、中国・習近平(シージンピン)政権が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」まで、幅広いテーマを含むものとなった。それは、米トランプ政権の外交に一致団結して対抗しようとする参加国の姿勢が色濃くにじみ出たものであり、ほぼ同じ時期にカナダ・シャルルボワで開かれた先進7か国(G7)による主要国首脳会議で、米国と他の参加国の亀裂が明らかになったのと対照的に映った。

     もう一つ注目されたのが、中国とインドの融和の演出だ。両国はもともと国境紛争を抱え、たびたび緊張が高まっていた。近年は、中国がインドにとって安全保障上の脅威であるパキスタンとの連携を強化し、また、スリランカ、モルディブ、ネパールなど南アジアを舞台とする勢力圏争いが激化したほか、インドの対中貿易赤字問題などもあり、中印両国の関係はさらに不安定化。昨年はブータンをはさんだ両国の国境地帯で緊張が高まり、軍事衝突が懸念される事態となった。

     ところが、最近になって両国は関係改善に向けて動き出したようである。インドのモディ首相は4月下旬、中国・武漢を訪問。その約1か月後にSCO首脳会議出席のため訪中予定だったのにあえて訪問したことは、関係改善への意欲の表れと受け止められた。習主席も武漢まで出向くという異例の厚遇でそれに応え、モディ首相とともに景勝地を散策するなど、友好的な雰囲気を演出した。

     6月に入ると、モディ首相はシンガポールで開かれたアジア安全保障会議(シャングリラ対話)に出席し、基調講演で「インドと中国が協力することがアジアと世界の利益になる」と発言した。

     短期間のうちに活発な首脳外交が展開されたことで、両国の関係は本格的な雪解けを迎えたのではないかとの見方も出ている。しかし、中国とインドの対立は根が深い。今後も様々な局面でリスクが顕在化する可能性は十分にある。

    2018年06月22日 15時22分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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