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    経済

    真夏でも「冬の時代」…紳士服業界どう生き残る

    読売新聞大阪本社論説・調査研究室主任研究員 中村宏之
     真夏の太陽が照りつけるオフィス街。ネクタイを緩め、脱いだ上着を手に、汗をふきながら歩くビジネスマンの姿がほんの少し前まで当たり前だった。クールビズの定着を喜ぶ人が多い一方で、需要喚起に頭を悩ませているのが紳士服業界だ。夏以外でもオフィスでの服装自由化を進める企業は多い。狭まる市場に、異業種参入も相次ぐ。紳士服各社はどんな生き残り策を図るのか。

    カジュアル、軽装がオフィスの“常識”

    • 猛暑のオフィス街。ネクタイ・スーツ姿が痛々しく見えることも(写真はイメージです)
      猛暑のオフィス街。ネクタイ・スーツ姿が痛々しく見えることも(写真はイメージです)

     よく晴れた夏の昼下がり。あるビジネスマンが、「初めての訪問先だから」と暑さを我慢してネクタイ・スーツ姿で出向いたところ、相手に怪訝(けげん)な顔をされ、必要以上に距離を置かれてしまった。「自社のオフィスで冷房をガンガンに利かせている」と誤解され、不快に思われたようだという。

     政府が、クールビズを提唱したのは2005年の夏。当初は、接客を伴う業種や長い伝統を誇る保守的な企業などが導入に消極的とも言われたが、2011年の東日本大震災後の電力不安などもあり、普及は一気に進んだ。

     ビジネスファッションをめぐる世の中の意識の変化は、夏だけに限らない。金曜日にカジュアルな服装で仕事をする「カジュアルフライデー」などの効果もあって、季節を問わず、職場での軽装を容認するのがトレンドになっている。

     大手商社の伊藤忠商事は2017年6月から、金曜日を「脱スーツ・デー」として社員に推奨し始めた。金融機関など、さらに「お堅い」イメージの企業にも軽装化が広がりつつある。

     団塊の世代の大量退職や、「働き方改革」に伴うオフィススタイルの自由化により、そもそも日常的にスーツを着る人は減っている。軽装に慣れた世代が会社組織の中で多くを占めるようになれば、この傾向はさらに進むだろう。紳士服業界は、逆風の真っただ中とも言えるのだ。

    背広・ワイシャツ代は20年で半分以下に

    • 背広、ワイシャツへの家計支出は20年で半分以下に(写真はイメージです)
      背広、ワイシャツへの家計支出は20年で半分以下に(写真はイメージです)

     総務省の家計調査によると、1世帯あたり年間の背広代は1995年には1万3765円だったのが、2017年には5217円と約20年で約6割も減っている。同じくワイシャツへの支出も3759円から1697円へと半分以下に減った。

     紳士服業界もただ手をこまねいていたわけではない。快適な着心地や自宅で丸洗いできる利便性、暑い季節にうれしい清涼感などをアピールした新製品を、各社が競い合うように発売してきた。それでも、市場縮小の傾向に歯止めがかからないのが実情だ。

     その厳しい市場を、ユニクロを展開するファーストリテイリングなどの総合衣料メーカーや、ZOZO(ゾゾ)などのネット企業が狙う動きを見せている。イス取りゲームのような市場環境の中で、紳士服各社はどんな戦略を立てているのだろうか。

    2018年07月17日 11時10分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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