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    社会

    故郷の山はどうなる?登山地が抱く「悩みと望み」

    日本山岳遺産基金 前事務局長 久保田賢次
     「空気がいい、景色がキレイ」「山頂に立った時の感動が忘れられない」――。8月11日は「山の日」。日常生活では味わえない爽快感や達成感を求めて、人は山の頂上を目指す。だが最近、一部の山に人が集まりすぎるなどして、新たな問題も出てきているという。人と山は共存できるのか。日本山岳遺産基金の前事務局長で、各地の山の事情に詳しい久保田賢次さんが語る。

    北の名峰に「トイレ道」

    • 十勝岳連峰・美瑛富士の山腹に立つ避難小屋。周辺の環境悪化が大雪山系での携帯トイレ普及活動の発端となった
      十勝岳連峰・美瑛富士の山腹に立つ避難小屋。周辺の環境悪化が大雪山系での携帯トイレ普及活動の発端となった

     いきなりで恐縮だが、まずはトイレの話から始めたい。

     北海道の十勝岳連峰の北部に、美瑛(びえい)富士と呼ばれる山がある。標高1,888メートル、同連峰の中でただ一つ、富士山に似た円(すい)形のシルエットを持つ美しい山だ。

     山腹に避難小屋があり、周辺はテントなどの設営が可能な野営指定地になっているのだが、実はここにはトイレがない。地元の山岳愛好者らが環境省に設置を要望したが、維持管理などがネックとなり、実現には至らなかったそうだ。

     そこへ近年のブームもあって、多くの入山者たちがやって来た。その結果、何が起きたか。周辺の草やぶに放射線状の「道」が出現した。人呼んで「トイレ(みち)」。用を足す人たちの往来で草地が踏み固められ、近くにティッシュや汚物が散乱するさまが常態化してしまったのだ。

    広がる携帯トイレ普及活動

     心を痛めた地元の山岳愛好家らが立ち上がり、2014年、「携帯トイレ」の普及活動に乗り出した。携帯トイレは、用便を持ち帰るための凝固材入りビニール袋のようなもので、値段は1枚数百円。登山専門店などで買うことができる。

     用を足す際に必要な簡易ブースの設置を、地元の人々が環境省に提案して認められ、維持管理は地元の山岳団体で作る「美瑛富士トイレ管理連絡会」が担うこととし、2015年から3年間、試験的に運用した。

     2017年には、携帯トイレを持参し忘れた登山者のために小屋に常備するなどの施策も実施。効果はてきめんで、「トイレ道」などの周辺環境は大いに改善されたという。

     以上は、北海道「山のトイレを考える会」の仲俣善雄事務局長から寄せられた報告だ。この活動がきっかけとなり、今年7月、環境省、北海道、周辺市町などで構成する連絡協議会が「大雪山国立公園携帯トイレ普及宣言」を発表するなど、環境改善に向けた動きはさらなる広がりを見せている。

    2018年08月11日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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