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    文化

    大本営発表はなぜ「ウソの宣伝」に成り果てたか

    読売新聞編集委員、BS日テレ「深層NEWS」キャスター 丸山淳一
     8月15日は終戦の日。先の大戦における軍部の独善・ 欺瞞 ( ぎまん ) の象徴として語り継がれるのが「大本営発表」だ。当時、最高レベルのエリート集団だった大本営はなぜ、繰り返しウソの戦果を並べ立てるに至ったのか。真相を探ると、現代の日本社会にも通じる病理が浮かび上がってきた。

    組織の欠陥が生んだ「ウソとでたらめ」

    • 海軍報道部の発表の様子。写真中央は軍の報道部長(辻田真佐憲さん提供)
      海軍報道部の発表の様子。写真中央は軍の報道部長(辻田真佐憲さん提供)

     終戦の日が来るたびに、「日本は、なぜ無謀な戦争に突き進んだのか」という反省が繰り返される。特に罪深いとされるのが、国民を(だま)し続けた「大本営発表」だ。

     ウソとでたらめに満ちた発表は、今でも「あてにならない当局に都合のいい発表」の代名詞として使われる。戦果のごまかしは他国もしていたが、大本営のでたらめぶりは常軌を逸しており、「国民の士気を鼓舞するためだった」では片付けられない。そもそも大本営は天皇に直属する最高の統帥機関で、陸海軍のエリートが集められていた。発表は幾重ものチェックを経ていたし、ウソがばれれば国民の信頼を失い、戦争遂行が難しくなることも分かっていたはずではないか。

     私がキャスターを務める「深層NEWS」では、『大本営発表 改竄(かいざん)隠蔽(いんぺい)・捏造の太平洋戦争』(幻冬舎新書)を書いた近現代史研究者の辻田真佐憲(つじたまさのり)さんをお招きして話を聞いた。辻田さんは、でたらめ発表が行われた背景に、「情報軽視」と「内部対立」という2つの構造的な欠陥があったと分析している。

    情報軽視の悪癖、現場の報告を鵜呑みに

     大本営発表が最初からでたらめだったわけではない。真珠湾攻撃の戦果は、航空写真を綿密に確認するなどした上で、3度も修正されている。戦闘機から見た艦船は点のようなもので、本当に沈んだのか、沈んだ艦は戦艦なのか、駆逐艦なのかを判別するのは、熟練度が高い搭乗員でも簡単ではないからだ。

    • 「深層NEWS」より
      「深層NEWS」より

     戦線が拡大し、熟練度が低い搭乗員が増えるにつれ、戦果の誤認が急増した。誤認は米軍にもあったが、大本営には情報を精査したり、複数の情報を突き合わせたりする仕組みがなかった。特に作戦部には現場からの情報を軽視する悪癖があった。根拠もなく報告を疑えば「現場の労苦を過小評価するのか」と現場に突き上げられる。誤った報告は鵜呑(うの)みにされ、そのまま発表されていった。

    2018年08月15日 05時20分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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