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    経済

    享年58歳、命削り働く…元財務官僚の「遺言」

    読売新聞経済部 小林泰明
     病魔に襲われ、最後は車椅子で仕事をやり遂げた香川俊介・元財務次官が世を去ってから、この8月で3年が ( ) った。懐の深い人柄と広い人脈で、「不世出の財務官僚」と評された香川。生きていれば、相次ぐ不祥事で信用を失った古巣をどう 叱咤 ( しった ) 激励したのか。その生きざまから「遺言」を探った。(敬称略)

    逃げない姿勢

    • 財務次官時代。財務省事務次官室で=神蔵孝之氏提供=(2014年10月撮影)
      財務次官時代。財務省事務次官室で=神蔵孝之氏提供=(2014年10月撮影)
    • 政官財界の大物をはじめ、香川と親交が深かった関係者が思い出をつづった追悼文集「正義とユーモア」
      政官財界の大物をはじめ、香川と親交が深かった関係者が思い出をつづった追悼文集「正義とユーモア」

     首都近郊の広大な霊園。3年前の2015年7月まで次官を務め、1か月後の8月9日、58歳でこの世を去った香川が眠る。この8月に訪れると、その早過ぎる死を惜しむように、花やカップ酒が供えられていた。

     逃げない姿勢。約36年にわたった官僚人生で香川が貫いたものだ。仕事で対立関係にあった人さえ、その気骨を認める。

     小泉内閣当時、香川は公共事業担当の主計官として、大幅な予算カットを巡り、自民党の族議員らと激しく対峙(たいじ)した。反対陣営のドン、古賀誠(自民党元幹事長)は香川の追悼文集「正義とユーモア」に一文を寄せている。「『のめないことはのめない』とはっきり言い切った」「“国家に対する忠誠と奉仕”の気概に燃えた官僚の(かがみ)のような人だった」

     財務省のライバル、経済産業省も舌を巻いた。香川と東大で同級生だった高原一郎(元資源エネルギー庁長官)は、「『政VS官』、『財務省VS官邸』。彼は世間で言われる対立の構図を超越した存在だった。人間的な懐の深さがあったから、それができたんだろう」。

     政治家の扱いでは手だれがそろう財務省内でも抜きんでていた。当時、主計局で香川と机を並べていた同期の木下康司(元財務次官)は、「彼は真正面から歳出改革の必要性を説き、政策の上では対立しながら、政治家の信頼を失うことはなかった。これは誰も真似(まね)できなかった」と話す。

     小沢一郎、菅義偉、野田佳彦……。その「人間力」は多くの大物政治家も()きつけた。「香川が来たから仕方がないという相手が本当に多かった」。先輩の津田広喜(元財務次官)の弁だ。

    2018年08月23日 07時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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