ブロッキングありき?海賊版サイト巡る議論に不満続出

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「ブロッキングありき」にしないはずが…

 「ブロッキングありき」の事務局の意向が強すぎて、進行が(ゆが)められているのではないか――。「叱責事件」のあった会合に続く30日の検討会では、事務局の議事進行に委員から批判が相次いだ。

 消費者団体の代表として参加する長田三紀委員は、「ブロッキング法制度整備に反対だと発言しているのに、事務局作成の論点整理の資料にきちんと反映されていない」と憤った。

 ブロッキングを巡っては、これを求める出版社や権利団体の委員と、反対する消費者団体や通信事業者側の委員が激しく対立しており、6月から始まったこの検討会では冒頭、「ブロッキングありきの議論にはしない」ことが確認されている。だが、「ふたを開けてみれば、結局は『ブロッキングありき』で検討が進められている」と長田委員は焦りを募らせる。

ブロッキングと通信の秘密
 ブロッキングとは、通信事業者がユーザーの同意を得ずに特定のウェブサイトに対するアクセスを遮断する行為。遮断のためには全ての通信についてアクセス先をチェックする必要があるため、全ユーザーの通信の秘密を侵害する。憲法では、通信の内容や宛先を第三者に知られたり、悪用されたり、漏らされたりしない「通信の秘密」の権利を保障しており、電気通信事業法は事業者に対して通信の秘密を侵してはならないと定め、厳しい罰則を設けている。

米国は参考にならない?

 「事務局が検討会に報告する情報そのものが偏っている」と事務局運営に疑問を投げかけたのは弁護士の森亮二委員だ。

 事務局はこれまで、海外の制度を参考にするため豪州、韓国、英国、ドイツの法制度に詳しい有識者を参考人として呼び、ヒアリングを実施したが、米国については実施していない。ヒアリングを実施した4か国はいずれもブロッキングを可能とする法制度を導入している国だ。

SOPA法案には市民団体やIT企業などから激しい反対運動が起きた。著名な非営利団体EFF(Electronic Frontier Foundation)もサイトで抗議を表明した
SOPA法案には市民団体やIT企業などから激しい反対運動が起きた。著名な非営利団体EFF(Electronic Frontier Foundation)もサイトで抗議を表明した

 一方、米国では2011年、海賊版対策としてブロッキングなどを可能とする法案「オンライン海賊行為防止法案(SOPA=Stop Online Piracy Act)」が下院に提出されたものの、「表現の自由を侵害する」などの批判を受け、お蔵入りした経緯があった。知的財産と表現の自由という価値が対立する、まさに今回の日本での論争と同様の構図だったのである。

 「なぜ事務局は、制度を導入した国の事例だけ紹介し、米国については検討しないのか」。しかも、事務局がこれまで取りまとめた「論点整理」には、米国についても著作権侵害対策について「概観した」と記されていた。「一度も詳細な検討をしていないのに、終わったことにされてしまった。公平性を欠くのではないか」と森委員は批判する。

 これについては、「ブロッキング法制化もやむを得ない」とする立場をとる弁護士の福井健策委員からも、「自分もSOPAの事例を知りたい。議論には客観的なデータやファクトが大切」と発言があった。

裏付け不十分な「日本は遅れている論」

事務局資料ではEU加盟国28か国はすべてブロッキングを導入とあるが、2017年9月時点で15か国では実績がゼロになっている
事務局資料ではEU加盟国28か国はすべてブロッキングを導入とあるが、2017年9月時点で15か国では実績がゼロになっている

 森委員は、これまで事務局が提示してきたデータの信ぴょう性にも疑問を投げかけた。事務局は、検討会に対し「諸外国におけるサイトブロッキングの運用状況」として、「2017年9月現在、世界42か国で導入されている」とする資料を提出していた。ところが、このうち少なくとも15か国では調査時点でブロッキングの実績がなかった。しかも、ポーランドでは、権利者団体がブロッキングを可能とする国内法の整備を求める訴訟が継続していたとされ、この時点でまだ制度は導入されていなかった可能性が高い。

 森委員はこの日、「本当に42か国で導入されたといえるのか、教えてもらいたい」と事務局に詰め寄った。だが、実は事務局も詳細は把握していなかったのである。事務局によると、この資料は、著作権専門の情報誌に掲載された権利者団体MPA(モーション・ピクチャー・アソシエーション)幹部らの投稿をもとに作成したという。

 事務局は現在のところ、海外の運用状況を調べ直すつもりはないという。「海外で導入しているかどうかは、日本で導入すべきかどうかとは直接関係ない、とのご意見もある。海外の導入国が42か国であっても、それより少なかったとしても、あまり関係ない」とその理由を説明する。

 しかし、森委員は「『42か国導入』は、事務局提出のデータとして広く引用され、これをもとに『日本は世界から立ち遅れている』と論じる人もいる。権利者団体の作成した資料を確認もせずに出し、ミスリードしようとする責任は重い」とみる。

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39542 0 深読み 2018/09/03 18:30:00 2018/09/03 18:30:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20180903-OYT8I50049-T.jpg?type=thumbnail

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