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    国際

    マケイン氏死去 「偉大な米国」はどこへ向かう?

    読売新聞調査研究本部主任研究員 大内佐紀
     米政界の重鎮で、2008年の大統領選では共和党候補ともなったジョン・マケイン上院議員が8月25日、アリゾナ州の自宅で脳腫瘍のため81歳で死去した。葬儀では、大統領職を争い、政策面でもしばしば衝突したオバマ前大統領らが弔辞を述べ、マケイン氏が体現した、古き良き米国の良識や価値観をかみしめた。党派を問わず、参列者の胸中にあったのは、葬儀に招かれなかったトランプ大統領の予測不能な統治の下、世界の超大国が一体どこへ向かうのかという危機感と焦燥感だったのかもしれない。

    葬儀に招かれなかったトランプ大統領

    • 81歳で死去した米共和党の重鎮ジョン・マケイン上院議員(AP)
      81歳で死去した米共和党の重鎮ジョン・マケイン上院議員(AP)

     共和党の大統領候補を2000年にマケイン氏と争ったブッシュ元大統領(子)は「ジョンは権力の濫用を嫌悪し、頑迷な人間や、威張りちらす暴君に我慢ならなかった」と振り返った。

     08年の大統領選でマケイン氏に競り勝ったオバマ前大統領は「大言壮語や侮辱、いんちきな言葉や見せかけの怒りに満ちた政治や政治家。ジョンは、私たちに、もっと良い仕事をすることを望んでいた」と述べた。

     ワシントン大聖堂で9月1日に開かれたマケイン氏の葬儀。テレビ中継もされ、共和、民主両党から歴代3人の大統領や閣僚、議員ら4000人以上が参列し、「米国のヒーロー」の死を悼んだ。式典中、一際大きな拍手が湧き上がったのが、次女でテレビコメンテーターのミーガンさん(33)が、こう語った時だ。

     「ジョン・マケインのアメリカは寛容で、人を温かく迎え入れ、恐れを知らない。ジョン・マケインのアメリカは再び偉大にされる必要はない。なぜならアメリカは常に偉大だったから」――。


    • 葬儀の行われたワシントン大聖堂から運ばれるマケイン氏のひつぎ(9月1日)=AP
      葬儀の行われたワシントン大聖堂から運ばれるマケイン氏のひつぎ(9月1日)=AP

     弔辞を述べた人々は誰一人として名指しこそしなかったが、それぞれがマケイン氏の対極にある人物として念頭に置いていた人物がいる。ドナルド・トランプ現大統領だ。

     トランプ大統領はこの日、政敵を攻撃するツイートを次々と投稿し、その後、「アメリカを再び偉大に(Make America Great Again)」との選挙スローガンが書かれたキャップをかぶり、ゴルフに出かけた。政権与党の重鎮議員の葬儀に現職大統領の姿がないのは、極めて異例だ。

     マケイン氏は昨年7月に悪性の脳腫瘍と闘っていることを公表していた。弔辞を述べてもらいたい人には自ら電話をかけて依頼するなど、葬儀の段取りはすべて本人が生前に決めていた。トランプ氏の参列を望まないことも、これに含まれていたという。

    2018年09月10日 12時50分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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