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    米朝交渉難航の中、金正恩氏が余裕なワケ

    龍谷大学教授 李相哲
     北朝鮮は9月9日、1948年の建国から70年を迎えた。非核化を巡る米朝間の交渉が難航する中、平壌で行われた軍事パレードは生中継がなく、大陸間弾道ミサイル(ICBM)も登場しない控えめなものとなった。トランプ政権は北朝鮮の背後にいる中国に圧力をかけているが、 金正恩 ( キムジョンウン ) 朝鮮労働党委員長に焦るそぶりは見られない。逆に2回目の米朝首脳会談を提案し、揺さぶりをかけている。龍谷大学の李相哲教授に北朝鮮情勢を解説してもらった(聞き手・読売新聞メディア局編集部次長 田口栄一)

    米国を刺激するのは得策ではない

    • 建国70年を記念して平壌で行われた軍事パレード。朝鮮中央通信が10日に配信した写真(ロイター)
      建国70年を記念して平壌で行われた軍事パレード。朝鮮中央通信が10日に配信した写真(ロイター)

    ――今年2月の建軍節に行われたパレードにはICBMが登場したが、今回は登場しなかった。その理由として何が考えられるか。

     「米国を刺激するのは得策ではないと判断したのではないか。米朝の交渉は今、続けるべきか、やめるべきかの岐路にある。米国の我慢が限界に達しつつあることは、金正恩氏も理解している。

     ポンペオ国務長官の訪朝が8月24日になって中止になったのは、トランプ大統領特有の交渉を有利に運ぶための脅しではない。米国が北朝鮮の非核化の意思を疑い始めたからだ。米国は、北朝鮮に非核化の意思があるのであれば、まずは『核リストと大まかなロードマップを提示してくれ』と要求している。可能であれば、6か月以内に核弾頭やICBMの一部を国外に搬出するなど、具体的な行動を見せるよう求めているとも聞いた。

     しかし、北朝鮮にそのつもりはない。まずは朝鮮戦争を終わらせるための『終戦宣言に署名してほしい。それがなければ動くつもりはない』と言っている状況だ。

     北朝鮮は、朝鮮労働党の機関紙である労働新聞などを通じて、米国による一方的な非核化要求に応じるつもりはないことを強調してきた。8月23日には米朝交渉を陣頭指揮している金英哲(キムヨンチョル)統一戦線部長の名で書簡を送り、米国を脅した。『米国が今のまま北朝鮮の要求を無視して、一方的な態度で交渉に臨むなら、核活動を再開せざるを得ない』と。

     それに加えて、ICBMや核弾頭などを軍事パレードに出してしまったら、米国との対決姿勢をいよいよ本気の形で示すことになるので、気を使ったのだろう。対話を継続したいという意思の表れでもある」

    ――金正恩氏の偉大さをアピールしたい気持ちもあったはずだが。

     「記念行事を何もやらないわけにはいかない。突然やめてしまうと、国内に動揺が広がる可能性がある。金正恩氏の偉大さを示す必要はあるけれど、このまま突っ走ると、さらに米国の不信を買ってしまう。行事はやらざるをえないが、今の状況では派手にはできないという判断だったのだと思う」

    2018年09月11日 12時36分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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