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    前代未聞、ブロッキング法制化巡り委員の半数が反対

    読売新聞編集委員 若江雅子
     ブロッキング法制度整備の是非を巡り紛糾してきた海賊版サイト対策検討会は19日、予定していた最終日を迎えたが、事務局の提出した中間まとめ案に対し、全体の半数を占める9委員が連名の反対意見書を提出、検討会はとりまとめができないまま会期延長を決めた。一方、関係省庁間では事務局案に関する各省協議が始まったが、総務省が「ブロッキングではなく、利用者の同意を前提とするアクセス制限の手法を採用すべき」と修正を求めるなど、政府内でも意見が割れ始めている。

    「こんなことは初めて」

    • 19日、反対派委員たちが開いた記者会見
      19日、反対派委員たちが開いた記者会見

     「委員の半数が事務局案に反対するというのは、異常な状態です」

     19日の検討会終了後、東京都内で開かれた記者会見で、弁護士の森亮二委員はこう語った。森委員らはこの日、事務局の中間まとめ案に「検討会の外でブロッキング法制化を決定し、法案提出を強行することを可能にする内容だ」として反対する意見書を提出していた。

     名を連ねたのは、憲法が専門の東大教授、宍戸常寿委員や、消費者団体の代表を務める長田三紀委員、日本インターネットプロバイダー協会副会長の立石聡明委員ら9人。検討会は、座長2人のほか委員18人で構成されており、半数が事務局案に反対するという前代未聞の事態となった。

     「これまで色々な政府の検討会に参加してきたが、こんなことは初めてで驚いている」と話すのは長田委員だ。「ブロッキング法制化は消費者の通信の秘密や表現の自由にかかわる問題。違憲の疑いが払拭できるまで進めないよう事務局に再三求めてきたのに、全く無視された」と憤る。他の委員からも「海賊版被害が深刻なことは分かる。だからこそ広告規制など様々な対策を話し合ってきた。だが結局、事務局の狙いはブロッキング法制化だった」との不満の声があがる。

    ブロッキングと通信の秘密 ……ブロッキングとは、通信事業者がユーザーの同意を得ずに特定サイトに対するアクセスを遮断する行為。遮断のためには全ての通信についてアクセス先をチェックする必要があるため、全ユーザーの通信の秘密を侵害する。憲法では、通信の内容や宛先を第三者に知られたり、悪用されたり、漏らされたりしない「通信の秘密」の権利を保障しており、電気通信事業法は事業者に対して通信の秘密を侵してはならないと定め、厳しい罰則を設けている。

     9委員が求めているのは、とりまとめに〈1〉ブロッキングを可能にする法律には強い違憲の疑いがあること、〈2〉他の手段の実効性を検証するまで法制化はいったん見合わせるべきであること、〈3〉具体的な制度設計の記述は削除または「参考情報」にとどめること――の3点を盛り込むことだ。

     事務局案は、ブロッキング法制化の必要性について賛否両論を併記している。しかし、その憲法適合性の判断については、再三、違憲の疑いが指摘されても、その指摘は十分反映させず、「一定の条件下では憲法上の問題は少ない」との結論を導き出していた。その記述は詳細な制度設計にまで及ぶが、中には、検討会の外部の研究者が提出した資料を事務局が読み上げ、それに対する委員間の十分な議論がないままに、検討会で合意が得られたかのように記載されているものもあった。

     ただ、19日の議論では、「違憲論争」については、ようやく出口が見え始めた感もある。

    ブロッキングを巡るこれまでの経緯 ……今年4月、犯罪対策閣僚会議と知的財産戦略本部が「緊急対策」を発表。「漫画村」など海賊版サイト3サイトへのブロッキングを「適当」として、通信事業者に当面の対応を促す一方、ブロッキングの法制度整備についても「次期通常国会を目指し、すみやかに整備に向けて検討を行う」とした。緊急対策が消費者団体や法律家などの批判を受ける中、知財本部は6月に改めて検討会をスタート。著作権教育、正規版の流通促進、海賊版サイト対策の中心となる組織の設置、国際連携の強化、検索結果の削除や表示抑制など各種の対策が話し合われたが、ブロッキングについては賛否が割れ、紛糾が続いている。

    2018年09月20日 17時45分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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