「私も月へ行けますか?」東大教授に聞いてみた

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アポロ計画から50年もたつのに…

(画像はイメージ)
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 2019年は、米国のアポロ11号が初の月面着陸を果たしてからちょうど50年です。3人の宇宙飛行士を乗せたアポロ宇宙船は、1969年7月、全高約110メートルの史上最大ロケット「サターンV型ロケット」で打ち上げられました。

 当時、米国はソ連(当時)と激しい宇宙開発競争を繰り広げていました。人工衛星の打ち上げなどで一歩リードしていたソ連は、エンジンの開発を早々に切り上げ、灯油燃料(ケロシン)を使う従来のエンジンを30基束ねる方法でロケットの大型化を図りました。推進力は十分でしたが、30基のエンジンすべてを機能させることができずに失敗しました。

 これに対し、一歩出遅れていた米航空宇宙局(NASA)は、液体酸素と液体水素という新しい燃料を使う高性能なエンジンを開発。これで、月面着陸を成功させるのです。ところが、このサターンVは費用がかかりすぎることが課題となりました。

 スペースX社が計画している月旅行で使われるのは、大型の「ファルコン・ヘビー・ロケット」です。これは、実は、灯油燃料を使うエンジンを多数束ねるタイプのロケットです。かつて、ソ連がロケット開発で行った方法を踏襲しています。つまり、エンジンの推進性能としては必ずしも優れているとは言えません。ロケット工学を研究している立場としては残念なことですが、50年たってもそれほど技術が進んでいないということです。

無事に帰るまでが「旅行」

(エンジンを九つ束ねたタイプのスペースX社のロケット)
(エンジンを九つ束ねたタイプのスペースX社のロケット)

 技術的なことを言えば、ロケットを大型化し、人類が月へ行くことは可能です。

 ただ、ほかに課題が二つあります。打ち上げ時の乗組員の安全性の確保と、大気圏再突入による地球への帰還です。

 NASAと契約したスペースX社とボーイング社は、ISSへ人を運ぶ有人飛行を行った際、打ち上げ時に万が一事故が発生した場合、どうやって安全に逃げるかという方法について開発を続けています。旅行として一般人を乗せるのであれば、事故を想定した退避方法を確保する必要があります。

 もう一つは、地球への安全な帰還です。今回の計画では、月へ向かうスケジュールなどは説明されていますが、大気圏再突入のリスクについてはあまり語られていません。これまで、パラシュートを開いた宇宙船がカザフスタンの草原地帯に着陸する映像を見たことがあるかもしれません。月軌道から戻ってこようとすると、このような地球からの距離が近いISSからの帰還に比べて大きなリスクを伴います。

 宇宙船は、超軌道速度で大気圏に再突入する場合、前面の耐熱シールドが幾分燃えてなくなることが不可避です。そのため、帰還時に、どれだけ高温になるのか、どれだけ燃えるのか、中にいる人が溶けてしまわないかというリスクを考えなければなりません。

 安全性を重視すれば、シールドは厚く、重くなってしまいますが、かといって、設計上でちょっとしたミスがあれば命の保証はありません。

 

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43357 0 深読み 2018/10/03 16:49:00 2018/10/03 16:49:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181003-OYT8I50022-T.jpg?type=thumbnail

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