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    揺らぐ「ブロッキング必須論」…注目の仮処分決定

    読売新聞編集委員 若江雅子
     法制化を巡り賛否が対立する海賊版サイトのブロッキング問題。その論点の一つは、「ブロッキング以外に実効性のある対策はないのか」という点だ。ブロッキングは憲法で保障された「通信の秘密」の侵害にあたるため、他に有効な対策があるにもかかわらずブロッキング法制化を進めれば、憲法違反となる可能性が高いからだ。その答えを探る上で今、ある投稿記事の差し止めと発信者情報の開示を命じた東京地裁の仮処分決定が注目を集めている。

    「媒介者の行為」も権利侵害と認定

     9日付で仮処分の命令を受けたのは、米国の大手CDN(コンテンツ配信ネットワーク)事業者のクラウドフレア社だ。

     CDN(Content Delivery Network)とは、インターネット上の様々な場所にキャッシュ(一時的なデータ)サーバーを設置し、顧客として契約したウェブサーバーの内容を一時的に保存して地理的・ネットワーク的に近い閲覧者に代理で応答するサービスを指す。大量のアクセスが集中するウェブサイトなどを安定的に運営するために使われる。

     申し立てを担当した山岡裕明弁護士によると、対象となったのは日本語のウェブサイトに投稿された無断撮影の写真や人格権を侵害する記事だった。クラウドフレア社はこのサイトのキャッシュを自社のサーバーに保存し、掲示板の「代理」として閲覧者のアクセスに応答しているだけで、「自分たちは掲示板の情報そのものを削除することはできない」などと主張したが、東京地裁は、直接の権利侵害者ではない媒介者の行為も、一定の場合には権利侵害にあたると判断した。山岡弁護士は「CDNが使えなくなればアクセスを安定的に処理することができなくなり、サイトの運営は困難になる」と歓迎する。

    大規模海賊版サイトに欠かせぬCDN

    • ブロッキング問題が浮上するきかっけを作った「漫画村」もクラウドフレアを使っていた
      ブロッキング問題が浮上するきかっけを作った「漫画村」もクラウドフレアを使っていた

     今回争われたのは、肖像権など人格権を侵害する記事に関してだが、山岡弁護士は「著作権侵害についても同様に判断される可能性は高い。次は著作権侵害でも申し立てを検討したい」と話す。

     仮に著作権侵害でも同様の判断が示されるとすれば、海賊版サイト対策に悩む権利者には大きな朗報となるはずだ。というのも、CDNは大規模海賊版サイトの運営に欠かせない「必須ツール」だからだ。CDNは大量のアクセスの負荷を分散させて高速処理を可能にするだけでなく、サイト運営者の身元を隠すことも容易にする。昨年来、大きな問題となってきた「漫画村」もクラウドフレアのCDNを使っていた。大量のアクセスをさばく必要のある大規模な海賊版サイトの場合、CDNを使えなければ処理速度が遅くなったり、サーバーがダウンしたりして、運営に大きなダメージを受けることになる。

     実は、CDNに対する法的措置については、これまで、知的財産戦略本部の海賊版サイト対策検討会でも、たびたび議論されてきた。

    2018年10月10日 12時10分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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