揺らぐ「ブロッキング必須論」…注目の仮処分決定

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「訴訟費用が高額…」出版各社は及び腰

 例えば、8月5日には、インターネット上の権利侵害情報の削除などを数多く手がけている弁護士が連名で意見書を提出し、「CDN事業者からの配信を止めることが、現実的かつ実効的なレベルでの海賊版サイト対策」「CDN事業者に対する送信防止措置を求める裁判・仮処分が可能」と指摘している。

 ところが、出版9団体で作る「出版広報センター」によると、出版各社はこれまでクラウドフレアに対して裁判所での手続きは講じてこなかったという。「削除や発信者情報の開示の要請は数え切れないほど行ってきたが、ほとんど応じてもらえなかった」と説明するが、それはあくまで「裁判外」のお願いベースの行動だった。「海外事業者に法的措置をとるとなると、費用が高額になるうえ手間もかかるので現実的ではない」というのが主な理由だ。今月、海賊版サイト対策検討会に事務局が示した「とりまとめ案」にも、「訴訟費用が極めて高額となる恐れがあるにもかかわらず、著作権者等にCDN事業者に対する国内外の差し止め請求を求めることは酷ではないか」「米国のように法務サービスの費用が高額な国の場合、高額の費用がかかる場合が多い」などと記されている。

高額?首をひねる「削除のプロ」

 しかし、ネット上の権利侵害情報の扱いがお手の物の、いわゆる「削除のプロ」の弁護士から見ると、なぜ権利者側がこれまでクラウドフレアに対する法的アクションを講じなかったのか、不思議でならないようだ。

 「削除」の第一人者で、先の意見書に名を連ねた神田知宏弁護士はこう首をひねる。「海外CDN事業者相手の訴訟でも、日本に管轄裁判所が認められる可能性が高いというのは、我々、削除の実務を手がける弁護士にとっては常識。日本で裁判ができるので費用も抑えられ、手続きも簡単だ」。今回、山岡弁護士が担当した事件では、供託の担保金を入れても、費用は30万円強だった。一般的な弁護士費用も20万~50万円とされる。

 一方、海賊版サイト対策検討会の事務局のとりまとめ案では、「著作権法に基づく差し止め請求が認められるかどうかは疑問」といった消極的な意見も書かれている。これについても、やはり先の意見書の起案者の一人、壇俊光弁護士が異を唱える。「むしろ著作権侵害の場合、直接の権利侵害情報の発信者でなくても、侵害の主体として責任を認められる可能性がさらに高まるのでは」。これは、著作権に特有の「カラオケ法理」があるからだ。

カラオケ法理の“長い腕”

著作権に特有の「カラオケ法理」とは…
著作権に特有の「カラオケ法理」とは…

 カラオケ機器を有料で使わせていたカラオケスナック店の経営者に対する損害賠償を認めた判決にちなむ考え方で、管理や支配の状況、利益を得ているかどうかなどから、著作権侵害の主体として位置づけられるかどうか判断するというものだ。

 2001年には、カラオケ機器リース業者について共同不法行為責任を認めた最高裁判例もあり、壇弁護士は「CDN事業者と海賊版サイトの関係はこれに似ている」と指摘する。また、小学館発行のファンブックに収録された人気漫画家の対談が、掲示板「2ちゃんねる」に転載された「罪に()れたふたり」事件では、小学館から削除要請を受けた後も放置していた掲示板管理者に対し、削除や損害賠償の支払いを命じる高裁判決も出ている。

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43990 0 深読み 2018/10/10 12:10:00 2018/10/10 12:10:00 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20181010-OYT8I50005-T.jpg?type=thumbnail

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