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    社会

    上から目線の「なさい」本を手に取ってしまうワケ

    かんき出版編集部長 大西啓之氏
     「投資なんか、おやめなさい」「長生きしたけりゃふくらはぎをもみなさい」「掃除は『ついで』にやりなさい!」――。最近、「〇〇なさい」と強く言い切る本のタイトルが目立つ。ベストセラーも出ていて、読者は反発を覚えるだけではないようだ。これらのタイトルに、出版社はどのような思いを込めているのか。ビジネス書や実用書などを多く出し、「なさい」本も手掛ける出版社の一つ、かんき出版(東京都千代田区)の編集部長大西啓之さんに聞いた。(聞き手 メディア局編集部 阿部明霞)

    なぜ命令調のタイトルがウケるのか?

    • 本のタイトルについて語る大西さん
      本のタイトルについて語る大西さん

     ――「置かれた場所で咲きなさい」(幻冬舎)、「肺炎がいやなら、のどを鍛えなさい」(飛鳥新社)……。唐突な命令口調で、読者の目を引き付ける「なさい」本。「××し放題」「▲▲するだけでOK」など、至れり尽くせり型のキャッチコピーが世に(あふ)れる中で異色とも言えるが、読者の反応は正直なところ、どうなのだろうか。

     本のタイトルにも流行や移り変わりがありますが、今は「直球勝負」のタイトルが手に取られやすい。命令や断定調の、短くて「刺さる」タイトルが読者に受け入れられています。

     情報過多の時代だからでしょう。(SNSなどを通じ)「私はこう考える」と百家争鳴に好きなことが言えて、あまりにも情報が多い。読者は「どれが正しいんだ?」と迷っている時代でもあります。そういう中で、「〇〇なさい」と断定してくれるタイトルは、少なくとも読者を一瞬、振り向かせる効果があるのではないかと思います。

     ――「疲れをとりたきゃ腎臓をもみなさい」(アスコム)、「図解 40歳からは食べ方を変えなさい!」(三笠書房)……。「なさい」本が圧倒的に多いのは健康ジャンルの本だ。ほかには、先に挙げた「置かれた場所で咲きなさい」のような自己啓発本、ビジネスジャンルの本も目立つ。いったい、どんな読者層を狙っているのだろうか。

     「〇〇なさい」という言葉が響くのは、30歳代半ばくらいまでで自己啓発本を読む人や、定年を迎えた人たちではないかと考えています。

     僕はずっとビジネス書を作ってきたのですが、ビジネス書の読者は人生に希望を持とうとして、「あきらめていない」人たちが多い。まだ何かを変えようと思っています。

     一方、30歳代後半に差し掛かると、あまり自分の人生を変えたくないし、変えられなくなってくる。今の会社に落ち着き、家庭もあり、ローンはあっても住宅を持ち…となると、(見ず知らずの他人から)「〇〇なさい」とはあまり言われたくない。働き盛りの中年は自分の人生にある程度、踏ん切りをつけているので、(「〇〇なさい」が)あまり響かないのかもしれません。

     ところが、そういう年齢を過ぎて会社を“卒業”した定年後、人生に新たな迷いが出てくると思います。特に、健康面が気になる。だから健康をテーマにした「なさい」本が多くなるんですね。

    2018年10月21日 07時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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