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    国際

    揺らぐ1953年体制、朝鮮半島発の激震に備えを

    キヤノングローバル戦略研究所研究主幹 宮家邦彦
     北朝鮮の核問題を巡る米朝、南北の駆け引きが活発化している。この問題が決着する時、東アジアは大きく姿を変えているだろう。1953年の朝鮮戦争休戦協定以来、65年間続いてきた秩序は、「終わりの始まり」の時代を迎えた。新たな時代に日本はどう備えるべきか。キヤノングローバル戦略研究所の宮家邦彦研究主幹に聞いた(聞き手・読売新聞メディア局編集部次長 田口栄一)。

    安定生んだ体制に制度疲労

    • シンガポールで6月12日に行われた米朝首脳会談で、握手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)と米国のトランプ大統領。東アジア情勢は変革の時を迎えている=ロイター
      シンガポールで6月12日に行われた米朝首脳会談で、握手する北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長(左)と米国のトランプ大統領。東アジア情勢は変革の時を迎えている=ロイター

    ――北朝鮮の核問題をきっかけに、朝鮮半島情勢に大きな変化が生まれようとしています。宮家さんは今の状況を「53年体制の終わりの始まり」と呼んでいます。これはどういう意味でしょうか。

     「第2次大戦が終わった45年に大きなパラダイムシフト(枠組みの変化)が起きました。ブロック経済、ナショナリズム、ポピュリズムが荒れ狂った時代から、グローバルな開かれた経済システム、そして、自由、民主などの普遍的価値を基礎とする新しい国際システムに移行したのです。

     これを主導したのは米国ですが、当然のことながら、反作用もありました。それが冷戦です。冷戦が世界中で始まり、その東アジア版が50年に始まった朝鮮戦争でした。53年というのは、休戦協定が結ばれた年で、それ以来、東アジアで大きな戦争はありません。

     休戦協定は確かに戦争の残滓(ざんし)ではありますが、それが地域にもたらした安定は極めて効果的でした。日本の戦後復興も、韓国の『漢江(ハンガン)の奇跡』(60年代以降の経済成長)も、このおかげです。中国の改革・開放も朝鮮半島に火種が残っていたら、今ほどの成果はあげられなかっただろうと思います。

     ところが65年たって、53年体制は制度疲労を起こしています。中国が台頭し、北朝鮮が核兵器を持ちつつあるという状況が生まれ、米国の影響力が相対的に落ちてきたことで、この体制は徐々に徐々に風化してきました。

     朝鮮半島において、次の状況に向かう動きが活発化しています。韓国で保守が弱体化したスキをついて、今の(北に接近するという)状況が生まれています。中国が強大になり、北がにっちもさっちも行かなくなって核を持ちつつある、米国が信用できないとなった時に、韓国がとり得るオプションの一つでした。ところが、それによって53年体制の風化が加速しています。

     米国のトランプ大統領は、6月12日の米朝首脳会談で金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長に対して、不必要なまでに国際的認知を与えました。結果的に、53年体制の風化ないし崩壊に向けた速度を一気に早めてしまいました」

    2018年10月31日 16時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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