座れない、すぐに遅れる…直通運転に異議あり!
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19世紀からあった?
――直通運転の始まりは、現在の都営地下鉄浅草線と京成線の1960年かと思っていましたが、もっと古くからあるようですね。

昔の話をすれば、川越鉄道(現・西武新宿線と国分寺線)は、川越(現・本川越)を出て国分寺へ着くと、甲武鉄道(現・JR中央線)に乗り入れていました。大正天皇が1912年に川越を訪問する際、国分寺経由で新宿と川越を結ぶお召し列車が走りました。それより前、明治天皇が1895年に広島から帰京する際、山陽鉄道(現・JR山陽線)と東海道線を直通するお召し列車を運行させた記録があります。
今日、直通運転のメリットは、観光の面で顕著でしょう。東横線で言えば、横浜方面と川越方面が乗り換えずにつながり、行きやすくなりました。
意外なところでは、私立の進学校で、恩恵を受けている中学・高校が結構あるようですよ。遠方からの通学がしやすくなり、優秀な生徒が集まるようになったというのです。
“自己完結”型路線は遅れが少ない?

――国土交通省が東京圏の45路線を対象にまとめた「遅延証明書の発行状況」(2016年度)があります。これを見ると、1か月あたりの発行日数が最も少なかったのは、直通運転をしていない東武野田線の1.4日でした。
日々通勤する人にとって、直通運転はデメリットのほうが多い気がします。東横線の渋谷駅はかつて始発駅でしたから、夕方のラッシュ時、ホームに少し並べば、座って帰ることもできました。直通運転で渋谷が途中駅になった今、始発以外で座ることはかなり難しいでしょう。
それに、事故などが起きると遅れが広範囲に広がります。他線のトラブルの影響を受けない“自己完結”型路線は、ダイヤが乱れにくいのとは対照的です。車内で忘れ物をした場合、保管場所が他線の駅だと取りに行くのが大変という側面もあります。
東横線の場合、直通運転は、東急グループにとってもデメリットがあるのではないでしょうか。例えば、渋谷駅が終点だった時は渋谷の東急百貨店で買い物した人が、そのまま副都心線で新宿三丁目駅まで足を伸ばし、新宿の百貨店へ行くケースも増えたと思います。
――今後の直通運転計画をみると、相模鉄道(相鉄)が2019年度、JR東日本と直通運転する予定です。
相鉄は、日本民営鉄道協会に加盟する大手16社の一つですが、路線は神奈川県内で完結しています。相鉄沿線から東京へ行くには、終点の横浜駅で乗り換えなければなりません。相鉄にとっては、JRと直通運転することで「乗り換えずに東京へ速く行ける」点をアピールし、沿線の資産・ブランド価値を上げたいという思いがあるのではないでしょうか。