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    国際

    「一帯一路」上の国々で異変、中国離れが進むのか

    住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリスト 石井順也
     中国の 習近平 ( シージンピン ) 政権が進める巨大経済圏構想「一帯一路」上の国々で、次々と異変が起きている。マレーシアでは政権に復帰した剛腕マハティール氏が中国主導のプロジェクトに大ナタを振るい、モルディブでは大統領選で「親中派」が敗北、パキスタンではカーン新政権が「一帯一路」関連事業を精査する動きを見せた。これらの動きは中国への警戒感の広がりを示しているが、逆にスリランカでは大統領が首相を解任、「親中派」の前大統領を後継首相に指名した。中国とどう向き合うか。それぞれの国が出した答えを住友商事グローバルリサーチ国際部シニアアナリストの石井順也さんに解説してもらった。

    首相解任、スリランカでさらなる中国傾斜か

    • 5日、スリランカの都市コロンボで開かれた集会で、シリセナ大統領(右)と話すラジャパクサ氏(ロイター)
      5日、スリランカの都市コロンボで開かれた集会で、シリセナ大統領(右)と話すラジャパクサ氏(ロイター)

     スリランカのシリセナ大統領は10月26日、ウィクラマシンハ首相を解任し、後継に前大統領のラジャパクサ氏を指名した。

     ウィクラマシンハ氏は解任を憲法に反し、無効であるとして争っており、国会議長も同調。大統領の弾劾や早期解散総選挙も取り沙汰され、政治の混迷が深まっている。

     2005年から15年まで大統領を務めたラジャパクサ氏は、30年の長きにわたる内戦を終結させ、英雄となったが、内戦の時代から頼りにしたのが中国だった。同氏は中国マネーを用いてインフラ開発を推進。内戦終結直後には復興需要もあり、スリランカは高成長を実現したが、次第に経済は停滞し、巨大な債務の返済が深刻な問題になった。

     スリランカ政府は昨年12月、ハンバントタ港の長期貸与契約を中国の国営企業と締結、港の運営権を引き渡したが、過剰債務がその国の政治と経済に深刻な影響を与えたことは、米国による厳しい中国批判を招き、「一帯一路」上の国々にとっても人ごととは思えない警戒心を抱かせた。

     ウィクラマシンハ氏とシリセナ大統領は、所属政党は異なるが、かつては独裁的権力をふるったラジャパクサ氏を共闘して大統領選で敗北に追いやった間柄である。シリセナ大統領が就任すると、ウィクラマシンハ氏は首相に就任した。

     しかし、筆者が昨年11月にスリランカを訪問し、現地の有識者から聴取したところでは、政策方針や政治スタイルの違いから、すでに両者の関係はぎくしゃくしていた。その溝は今年2月の地方選でウィクラマシンハ氏の政党が大敗したことにより決定的に深まった。

     地方選ではラジャパクサ氏が率いる政党が大躍進を遂げ、シリセナ大統領は再びラジャパクサ氏の力に頼ることを選んだ。今回の首相解任劇はスリランカ内政上の問題であるが、「親中派」のラジャパクサ氏が復帰すれば、中国への傾斜がさらに進むことになるだろう。

     伝統的にスリランカに対して強い影響力を持ち、スリランカの対中接近を牽制(けんせい)してきたインドは衝撃を受けているに違いない。また他の「一帯一路」上の国々も、今後のスリランカの動向を多大な関心を持って見守っていくことになるだろう。

    2018年11月10日 07時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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