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    社会

    増えるDV…なぜ妻や彼女を殴ってしまうのか?

    立命館大学大学院人間科学研究科教授 中村正
     全国の児童相談所が2017年度に児童虐待の相談・通告を受けて対応した件数が、過去最多の13万3778件(速報値)に上った。増加の背景には、子どもの前で親が家族らに暴力をふるう「面前DV(ドメスティック・バイオレンス)」を心理的虐待として警察が積極的に通告していることなどがある。暴力や虐待はなぜなくならないのか。加害者の心理を研究する立命館大学大学院の中村正教授に解説してもらった。

    それは「愛の鞭」ではない

    • (画像はイメージ)
      (画像はイメージ)

     「愛の(むち)」「コミュニケーションの一環」として容認されてきた日常の暴力がたくさんある。とりわけ、親子・夫婦の家族関係、男女や同性同士の恋人関係、指導がつきものの師弟関係などにおいてである。

     これらの関係は、距離が近く、相互に希求しあっている。対等ではなく、優劣のある非対称的な関係性である。ここで生じる暴力は、ジェンダーが反映されることが多く、男性が加害者というケースがほとんどだ。

     2000年代になり、「日常の暴力」を巡る事情は変化した。

     夫婦喧嘩や痴話喧嘩ではなく「ドメスティック・バイオレンス(DV)」、しつけではなく「子ども虐待」、指導や叱咤(しった)激励ではなく「体罰」、熱い恋愛感情ではなく「ストーキング」、遊び・からかい・おふざけではなく「ハラスメント」「いじめ」「いじり」、介護疲労ではなく「高齢者虐待」として名付けられてきた。

     とはいえ、暴力との境界線は依然としてはっきりしない。確かに、こうした行動は度が過ぎれば問題になるし、程度によるなどという場合もある。しかし、いったん暴力が肯定されると、行動は倍加していく。だから、そのまま放置しておいてよいものではない。けれども、すべてを刑罰で対処するわけにもいかない。

     では、この種の関係性に宿る暴力に対して、周囲はいかにして積極的に関与できるのか。

     保護命令・退去命令、接近禁止命令、親子の分離措置など被害者保護の取り組みは進展しているが、加害者対策はできていない。体罰、ハラスメント、いじめに関しても、その予防策や加害者対応は不十分である。

     脱暴力をどのようにすすめるのか、名付けた後の課題が大きくなった。

    2018年12月04日 05時55分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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