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    働く

    「社内官僚がいない会社」が躍進する理由

    三菱総研シニアリサーチプロフェッショナル 奥村隆一
     「どうせウチの会社は……」。夜の居酒屋で、ランチタイムのカフェで、同僚とおぼしき社員たちが長々と愚痴をこぼすのを耳にする。「働き方改革」の掛け声の一方で、以前とほとんど変わらない社内の組織やルールに対する不満も強いようだ。日本の企業は、このままで世界と互角に渡り合えるのか。労働問題、企業組織論に詳しい三菱総研シニアリサーチプロフェッショナルの奥村隆一さんが解説する。

    旧態依然…日本の企業組織の弊害

    • 写真はイメージ
      写真はイメージ

     理想的な企業組織とはどのようなものか。おそらく、どの会社にも当てはまる「解」は存在しないのだろう。ただ、今、日本にある大企業の大半は、組織のあり方が時代と不適合を起こしているようにみえる。

     デジタル技術の普及や新興国の成長などを背景にビジネス環境は激変し、変化のスピードはますます加速している。日本の企業の多くは、こうした環境の変化を後追いするように組織再編や人材配置を行うのがやっとのようだ。時代を先取りした前例のない組織づくりを目指そうとする企業は、残念ながら少ない。

     それどころか、イノベーションを図りたいと思ってはいるものの、旧態依然とした管理型の人材マネジメントの仕組みが新規ビジネスモデルの開発や創出を阻害し、社員のモチベーションを下げて生産性を低下させてしまう例すらある。

    「社内官僚制」の何が問題か

     日本の会社組織の特徴は、多くが「事業局/営業部/法人第3課」のような階層的構造を持つことだ。社員には役職に応じた職務権限が与えられ、職務内容は明確化されている。事業運営のルールや決定事項は文書で記録し、保管するのが普通だ。

     これらの特徴は、ドイツの社会学者・マックスウェーバーが「官僚制」と呼んだ組織そのものである。現代の日本で「社内官僚」などという場合、たいていはネガティブな意味を含むが、ウェーバー自身は官僚制組織を全否定しているわけではない。リーダーの権力乱用を抑えられるし、個人的な利害や感情ではなく、専門性と客観性が重んじられることで、合理的な経営が可能になるのは大きなメリットだ。

     要は、官僚制組織が正しくないというのではなく、この組織の欠点である意思決定スピードの遅さ、杓子定規(しゃくしじょうぎ)な対応、社員の人間性や個性の軽視といった特徴が、今日の経済社会や就業者のマインドと合わなくなってきている点に問題があるのだ。

     日本の企業が世界のライバルたちの中で存在価値を維持し続けるために、組織のあり方を根本から考え直す時期を迎えているのだと思う。

     

    2018年12月05日 07時00分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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