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    スポーツ

    プリンスから真のマラソン王者へ…服部勇馬の脱皮

    読売新聞運動部 西口大地

    「4強」の一角に

    • 2時間7分27秒の好タイムだった(2018年12月2日、秋月正樹撮影)
      2時間7分27秒の好タイムだった(2018年12月2日、秋月正樹撮影)

     今年に入って日本記録を更新した設楽悠太と大迫傑、アジア大会覇者の井上に続いて、東京五輪男子マラソンの主役候補に躍り出た服部だが、元々は、新潟県十日町市で建設会社を営む父・好位(よしのり)さんの後を継ぐため、大学までで競技生活を終えるつもりだったという。

     その思いが変化するきっかけとなったのは、宮城・仙台育英高3年時に出場した全国高校駅伝だった。

     服部はこの年、全国高校総体男子5000メートルで日本人2番手の5位に入り、世代を代表するエースの1人となっていた。しかし、1区で21位の大ブレーキ。チームは12位に沈んだ。肩を落とす服部に、当時の清野純一監督は冗談交じりのニュアンスながら、「10年後、しっかり恩返ししてくれよ」と励ましの言葉を送った。その何げない一言が、「世界で戦える選手になりたい」という思いの源となった。

     大学2年の冬には金栗記念熊日30キロロードレースで学生新記録を出して、マラソン挑戦の意欲がわくとともに、卒業後も競技を続ける決意が固まった。

     翌夏の帰省中、息子の思いを察した好位さんは、「やるんだったら、実家を継ぐとか、帰ってくるとか考えるな」と背中を押した。「その言葉で一層、実業団に行ってもしっかり結果を残さないといけないという思いになった」。感謝の心は、競技に対する大きな原動力となっている。

     今回の優勝で、東京五輪代表3枠のうち2枠を決める来年9月の「マラソングランドチャンピオンシップ(MGC)」進出が決まった。

     周囲の評価も高い。レース後の日本陸連の会見で、尾県貢専務理事は「これまで『3強(大迫、設楽、井上)』と言われていたが、確実に『4強』になった」と言い、瀬古利彦・マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは「(2時間)5分台の力はある。末恐ろしい選手が出てきた」と賛辞の言葉を贈った。

     だが、服部本人は謙虚な姿勢を崩さない。

     「まだまだ僕自身、力はないと思うので、他の人に負けないような取り組みを今後も続けていけたら」

     王子から、真の王者へ。さらなる進化を見据えながら、服部は、MGCのスタートラインに立つ。

     

    プロフィル
    西口 大地(にしぐち・だいち)
     2005年入社。静岡、福島などの支局勤務を経て、11年6月から運動部。16年リオデジャネイロ五輪では陸上競技のほか、カヌー競技も取材した。現在は主に、陸上競技を担当している。

    2018年12月05日 10時30分 Copyright © The Yomiuri Shimbun
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