アホウドリ再生…孤島での“孤闘”が起こした奇跡
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乱獲され「絶滅」寸前に

この白い鳥は19世紀後半まで、亜熱帯以北の北太平洋全域に生息するありふれた海鳥だった。6月から9月までの非繁殖期は、米国の西海岸やベーリング海などで過ごす。10月から5月までの繁殖期は、日本列島の南海域や台湾周辺の無人島などでコロニーを作り、産卵して、ヒナを育てていた。
中でも、最大のコロニーがあった鳥島には、かつて100万羽ほどが生息していた。

しかし、軽く、保温性の高い羽毛をまとっていたがために悲劇が襲った。人間が暖をとるための羽毛を採取することを目的に、「ありふれた鳥」たちはこん棒で頭を殴られ、次々に殺された。
無人島で生活していたアホウドリは、天敵のいない環境で繁殖していたため、「殺される」ということを知らず、人間が近づいてきても逃げなかった。陸上では動きが鈍かったこともあり、容易に人間に捕まってしまった。
羽毛は当時、日本の貴重な外貨獲得源となっていたため、半世紀ほどで計約1000万羽が乱獲されて、1930年代になると鳥島と小笠原諸島にだけ少数が残った。アホウドリは、利便性や金銭を追い求める欲に
この頃、第二次世界大戦の戦地にもなった日本や台湾周辺の島々では、アホウドリの調査はできなかった。戦後になると、海外の鳥類学者らが調査を行うようになり、米国のオリバー・オースチン博士は、47年に鳥島と小笠原諸島で生息状況を調べたが、1羽の姿も確認できず、「アホウドリは絶滅した」と発表した。いわゆるアホウドリの「絶滅宣言」である。
しかし、アホウドリは生きていた。当時、鳥島には気象観測所があり、観測所の所員が1951年、鳥島の南東にある「
所員らは、斜面にハチジョウススキなどを植え、地面を安定させて営巣しやすくするなどしていた。だが、気象観測所は閉鎖され、火山島で、活動が活発化する危険もあることから、研究者も島に入らなくなり、いつしかアホウドリの存在は忘れ去られてしまった。