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対象生徒が多い高校の通知表

通知表を記入する教師たちは、疲弊しているのだろうか。現役教師・校長の声、保護者や児童・生徒の声、私の体験談をもとに、教師の苦悩の背景と問題点を考えてみたい。
もちろん、大半の教師は、通知表を巡る“うんざり感”を払いのけ、誠意をもって作成し、子どもたちに手渡していることはあらかじめ誤解のないように申し添えておく。
通知表といっても、小学校、中学校、高校ではその中身に大きな違いがある。
高校では各教科の成績、出席状況のみを記載する学校が増えている。成績や出席状況はデータ化され、コンピューターを使って打ち出される。たとえ所見欄があったとしても、コメントを記入するかしないかは教師の自由裁量に任されるケースが多い。
したがって、高校教師にとって“うんざり”は、通知表そのものではなく、成績算出に至る過程にある。試験問題の作成、採点、受け持ち生徒の多さ、科目数の多さといった苦労が挙げられる。しかし、そこをクリアすれば、通知表はほぼ完成した形でオートマチックに打ち出されてくる。
高校生の保護者ともなると、通知表の関心事は成績だ。逆に言えば、成績の算出やデータを打ち込む際に、ミスのないように神経を使うことはあるが、小学校や中学校に比べると、通知表に関わる負担は小さいと言える。
気苦労が多い小中学校の通知表
一方、小中学校の通知表は、学習の記録(各教科の評価)、出席状況、行動の記録(学校生活の様子)、そして、所見がある。
文章表記を求められるのは所見欄だけではない。
学習の記録の中の「総合的な学習の時間の記録」に加え、道徳の教科化で「道徳」の評価も文章で書くことになっている。
学校によっては、行動の記録(特別活動、部活や児童会、生徒会の活動など)についても文章で表記しなければならないケースもある。
保護者の反応を気にする教師も少なくない。
「よその子には『クラスのムードメーカー』と書いていたのに、うちの子は『毎日元気よく登校できました』とだけ。えこひいきじゃないのかと……」(都内の公立小教諭)
「『落ち着きがない』と書いたら、親から発達障害の疑いがあるのかと問い詰められた」 (埼玉県内の小学校教諭)
小中学校において、通知表にかかる教師の労力は大変なものである。