2370万円もするホンダNSXが存続する意味

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トヨタ「スープラ」の復活

(トヨタのスープラ)
(トヨタのスープラ)

 2019年にはトヨタが「スープラ」を復活させると伝えられている。ドイツのBMWとの共同開発によるものだ。そのBMWは18年11月、8シリーズという優雅で豪華な高性能クーペを発表した。BMWは「もう一度駆けぬける歓びを再認識してほしい」と走る楽しさを強調する。

 メルセデス・ベンツにも高性能車ブランドのAMGにGTという車種があり、また原動機の面で最新の直列6気筒ガソリンエンジン+ISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター:モーター機能付き発電機)という、燃費と高性能を両立する新方式のAMG車も登場させている。

 スポーツカーメーカーのポルシェは、EVのタイカンを20年にも日本市場へ導入する予定だ。

 いずれも販売価格は数千万円を下らない高級・高性能車で、こんな時代に誰が購入するのかといぶかしく思う人もいるかもしれない。

 NSXがハイブリッド車であるように、スポーツカーといえども、もはや、高性能な走りを提供するだけではない。時代に適応した環境性能を備えながら、造形的にも美しく、運転する嬉しさをともなうかたちで市場に導入することにより、メーカー各社が自らの存在感を改めて高めようとしている。

 つまり、環境性能をアピールしながらブランド強化を行おうとしているのである。

 ポルシェは製品としてのブランド強化にとどまらず、エクスペリエンスセンターと呼ばれる施設を世界各地に展開する。施設内にあるさまざまなコースで、ポルシェ車の高性能を存分に体験し、楽しんでもらおうというもので、2021年には国内にも千葉県木更津市に開所する予定となっている。

高性能で安全、そして感動

 馬と馬車の時代が終わり、移動手段として自動車が世界を席巻した。

 それでも、なお、競馬や乗馬といった余暇を楽しむための手段として馬の存在感は失われていない。イギリスやフランスでは、馬車を巧みに操ることを遊びや競技として喜ぶ人たちがいる。

 同じように、自動車がCASEの時代を迎えても、競馬や乗馬のように、クルマ本来の運転の楽しさを味わえる場が必要とみて、ポルシェのように体験型施設の展開が始まっているのだ。

 来たるべき自動運転の時代に、自動車は何より安全で快適であることが重要な商品性になっていくだろう。そうした時代に選ばれる自動車メーカーであるための下地作りが、いま行われている。

 自動車メーカー各社のスポーツカー開発は、高性能かつ安全を追求する姿勢の表れであり、自らの存続をかけ、クルマが消費者の心を揺さぶる「感動」を与えるものであることを再認識させたいとの狙いだろう。

 「人はパンのみにて生くるものに(あら)ず」という言葉があるように、精神的なよりどころも人は求める。快適に生活できる充足に加え、合理的ではなくても気持ちを和らげる時を求めている。

 そのわずかなひとときのために、生き残りをかけた各メーカーの競争が繰り広げられている。

プロフィル
御堀 直嗣(みほり・なおつぐ)
 1955年、東京都生まれ。玉川大工学部卒。大学卒業後はレースでも活躍し、その後、フリーのモータージャーナリストに。現在、日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員を務める。日本EVクラブ副代表としてEVや環境・エネルギー分野に詳しい。趣味は、読書と、週1回の乗馬。新著に「スバルデザイン」(三樹書房)がある。

『スバルデザイン』(三樹書房)
『スバルデザイン』(三樹書房)

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