寅さん”復活”秘策は?「男はつらいよ」50周年

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「人情と優しさ」詰まった国民的映画

 映画は尻上がりに観客動員が増えて絶好調だったが、さらにシリーズ終了の危機は訪れる。第8作「男はつらいよ 寅次郎恋歌」(71年12月公開)後の72年3月、テレビ版から「おいちゃん」を演じ続けていた森川信さんが亡くなったのだ。

 「この映画は寅さんも面白いけれど、森川さんのおいちゃんも面白かった。代わる人はなかなかいない。これはやめる良いきっかけだな」と山田監督は思った。だが、松竹の映画を専門に上映していた松竹系列の全国の映画館館主が集まり、「寅さんを存続させる会」を結成、山田監督にシリーズ継続を強く求める事態に発展した。そのころ、映画は急激に観客数が減少し始めており、地方の映画館にとっては、安定して観客を呼べる「男はつらいよ」が頼みの綱だったのだ。こうして、おいちゃん役は松村達雄さん、続いて下條正巳さんが引き継いでいくことになった。

「しゃべる! 寅さんのにぎやかスタンプ」として、LINE公式スタンプも発売されている
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 「男はつらいよ」は、同一の俳優による世界最長の映画シリーズとしてギネスブックにも認定されたが、その記録は96年に渥美さんが亡くなったことでストップした。筆者は8月13日の暑い日に行われた、渥美さんと「お別れする会」の模様を昨日のことのように覚えている。

 会場となった松竹大船撮影所まで、約1キロ・メートル離れた最寄りのJR大船駅から延々と人の波が続いた。なんと約4万人ものファンが渥美さんに別れを告げようと訪れたのだ。これまで多くの著名人の葬儀を取材してきたが、これほどたくさんの人が詰めかけたのは後にも先にもない。ファンの多くは、渥美さん自身ではなく、寅さんとして、本当に近所のおじさんのように親しんでいたのだろう。これだけ幅広い人気を博す俳優が現れることはもうあるまい。今でも「よっ」とか、「それを言っちゃあ、おしめえよ」などいう声が聞こえてくるような気がする。

 映画通を称する人からは、「しょせんマンネリだ」などと作品を軽侮したような批判もあった。ただ、このシリーズには、未舗装の道路や集団就職の若者など、珍しくなったり、なくなってしまったりした日本の光景がフィルムの中に刻まれている。そして何より、日本人が忘れかけている人情と優しさが詰まっている。50周年を機に、改めて寅さんを見直してみてはいかがだろう。誰にでも新たなる発見があるに違いない。

 

プロフィル
福永 聖二(ふくなが・せいじ)
 読売新聞調査研究本部主任研究員。文化部次長、編集委員を経て現職。1993年より映画担当一筋。これまでに7000本以上の映画を見てきた。共著に『映画百年:映画はこうしてはじまった』(キネマ旬報社)など。

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