最強AI「アルファゼロ」登場で将棋は終わるのか

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将棋を究めることは可能なのか

最強の将棋ソフトを決める「世界コンピュータ将棋選手権」でモニターを見つめる参加者たち(2016年5月、川崎市で開かれた第26回大会で)
最強の将棋ソフトを決める「世界コンピュータ将棋選手権」でモニターを見つめる参加者たち(2016年5月、川崎市で開かれた第26回大会で)

 人間のはるかに先を行くアルファゼロが、将棋の全てを解明してしまう可能性はないのだろうか。もし、そんなことがあれば、ゲームとしての将棋は終わってしまう。

 「チェスにしろ、将棋にしろ、囲碁にしろ、アルファゼロは今のやり方で勝っています。おそらく人間よりは、正しい答えに近づいているのでしょう。

 将棋のような『完全情報ゲーム』には、必ず『解』が存在するのですが、具体的な『解』はわかりません。アルファゼロがやっていることは、勝ちやすい手を指していることに違いはないのですが、今やっている方法を突き詰めていけば、『解』を得られる保証はありません。正しい方向に向かっているかもわからないのです。

 正しいかどうかがわかるのは、全部答えがわかった時です。地球が滅びるまで計算し続けても、答えを出すのは難しいでしょう」

 これには補足が必要だ。マージャンやポーカーなどは、ランダムに積まれた山から(パイ)やカードを引くので、勝敗に偶然や運の入り込む余地がある。これに対して将棋やチェス、オセロなどのゲームは、相手がこれまでに指した手はすべてわかっており、双方の着手以外に勝敗に影響を与える要素が入り込むことはない。

 こうしたゲームは「二人零和有限確定完全情報ゲーム」と呼ばれ、双方が最善の手を続けていけば、(1)先手が必ず勝つ(2)後手が必ず勝つ(3)引き分け――のいずれかの結論が存在することが数学で証明されている。

 例えば、3×3の升目に「○」と「×」を交互に入れていき、一列に並べば勝ちとなるゲーム(三目並べ)は、1手目に「○」が中央を取った場合、2手目に「×」が4隅のうちのいずれかを取れば、引き分けに持ち込める。「○」が1手目にどこを取ろうと、「×」が最善手を続ければ、必ず引き分けになることがわかっているので、結論は(3)の引き分けである。

 将棋の場合、指し手の組み合わせは全部で10の220乗あると言われる。観測可能な宇宙全体の水素原子の数が10の80乗個と言われているので、将棋の指し手の可能性は事実上、無限大にあると言っていい。マシンの性能がどんなに向上しても、全部の可能性をしらみつぶしに調べることはできそうにない。

 「これからも将棋を楽しめる、ということです」

将棋ソフトはこれからも進化する

 将棋ソフトの進化のスピードには目を見張るものがある。最新の技術もあっと言う間に古くなってしまう。アルファゼロと戦ったエルモは、昨年の世界コンピュータ将棋選手権で優勝することができなかった。

 「エルモは昨年、2次予選で敗退してしまいました。バグが出てしまったためです。200何手(将棋としてはかなりの長手数)まで手が進まないと出てこないもので、おととしはそこまで長手数にならなかったので顕在化しなかったのだと思います。

 去年は1位、2位とも初出場のソフトでした。初出場が1位と2位を占めたのは第1回大会以降にはなく、実質初めてです。2017年、ソフトが佐藤名人に2連勝した時は、これで参加するソフトが減るかなと思ったのですが、この年は逆に増えました。外国からの参加もあり、全体のレベルも上がっています。

 今年も5月3日から5日にかけて、川崎市で世界コンピュータ将棋選手権があります。アルファゼロにはぜひ出てほしいですね」

 

プロフィル
瀧澤 武信(たきざわ・たけのぶ)
 早稲田大学政治経済学術院教授、早稲田中学校・高等学校校長、「コンピュータ将棋協会」会長。1951年生まれ。80年、早稲田大学大学院理工学研究科数学専攻計算数学専修後期課程単位取得後退学。玉川大学工学部専任講師、早稲田大学政治経済学部教授などを歴任。研究テーマは人工知能・知識工学のゲームへの応用、ファジー理論の教育工学への応用など。将棋ソフト開発の先駆者として知られる。

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60266 0 深読み 2019/01/13 07:00:00 2019/01/25 10:52:58 https://www.yomiuri.co.jp/media/2019/01/20190111-OYT8I50031-T.jpg?type=thumbnail

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