めざせ観光復活、浅草・スカイツリー「歩道」誕生

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東武鉄道の隅田川橋梁に歩行者通路を併設。観光客に浅草とスカイツリー方面を回遊してもらう狙いだ(記者撮影)

都道府県をまたぐ移動自粛要請が解除された前日の6月18日、東武鉄道は浅草・東京スカイツリー両エリアを結ぶ新観光スポットをオープンした。浅草駅からとうきょうスカイツリー駅までの隅田川を渡る鉄道の橋梁と高架下を活用。同社が都心で抱える2大観光地を徒歩で移動してもらうことで周辺エリアの活性化につなげる狙いだ。

最短距離で歩けるように

今回開業したのは隅田川橋梁に取り付けた歩行者通路「すみだリバーウォーク」と鉄道高架下のスペースを利用した複合商業施設「東京ミズマチ」。国内外から多くの観光客が訪れる浅草の中心、浅草寺からは東京のランドマークであるスカイツリーがよく見える。だが、これまでスカイツリーを目指して歩いて散策する場合は隅田川にかかる吾妻橋(あづまばし)や言問橋(ことといばし)を渡るため、少し遠回りをする必要があった。

6月18日に開業した「すみだリバーウォーク」(手前) (記者撮影)

東武は今回、浅草―とうきょうスカイツリーの1駅分の区間で既存の鉄道施設を活用し、最短距離である線路沿いをあえて歩いてもらう動線を整備。隅田川で隔たれた両エリアの回遊性を高め、にぎわいを周辺に波及させることで東京を代表する観光地としての地位をさらに高めたい考えだ。2020年度までの同社グループの中期経営計画でも重点投資するエリアの1つに挙げていた。

すみだリバーウォークは、隅田川橋梁の南側に“添架”した長さ約160m、幅2.5mの歩行者用通路。途中の床には真下の水面をのぞけるガラス窓も設けた。開門時間は7時から22時で、通行は無料。自転車は手押しであれば通ることができる。観光客だけでなく地元の住民にも川を渡るのに便利なルートとなりそうだ。鉄橋は日没から終電までスカイツリーと同様のライトアップを実施している。

一方、東京ミズマチは東京スカイツリーの足元を東西に流れ、隅田川と旧中川をつなぐ運河、北十間川に沿った鉄道高架下のスペースを活用した。名称は東京スカイツリータウンの商業施設「東京ソラマチ」と対になっており、一体で盛り上げる計画だ。隅田川橋梁やミズマチのある高架の既存部分は「スカイツリーホワイト」を基調とした色に塗り直し、スカイツリーとの統一感にこだわった。

今回、装いを新たにした隅田川橋梁の歴史は昭和初期にさかのぼる。

1931(昭和6)年、当初上野駅までの都心延伸を計画していた東武が浅草に乗り入れる際に架けられた。それまでは隅田川の東、現在のとうきょうスカイツリー駅が「浅草駅」だった。同駅は伊勢崎線の浅草雷門駅(現・浅草駅)までの開通に伴って改称、東京スカイツリー開業直前の2012年3月まで「業平橋」の駅名で親しまれた。今回開業した東京ミズマチのウエストゾーンのあたりには戦前に「隅田公園駅」が設けられていた。

景観と調和した鉄道橋

隅田川橋梁は関東大震災後に建設されたため、耐震のための工夫が随所に凝らされた。設計に当たっては隅田川の景観との調和だけでなく、電車の車窓からの眺めも確保できるよう配慮されたという。橋を渡るとすぐ浅草駅に向かって急カーブになるため、橋の上に上下線を連絡する両渡り分岐器が設置されている。

すみだリバーウォークの開通記念に東武が発行した冊子で、花上嘉成・元東武博物館館長は「どっしりとした安定感と軽やかな印象を併せ持つワーレントラスを採用。架線柱のデザインにもこだわり、実用性重視の鉄道橋の中では珍しい、『粋』な橋として、周囲の景観と調和しています」と解説。「日本一の繁華街浅草への乗り入れを可能にしたこの橋は、当時の東武鉄道にとって、まさに『夢の架け橋』でした」と結んでいる。ワーレントラスとは斜めの鋼材を上下交互に組み合わせた形式で、同橋梁は垂直材が付いた構造だ。

今回整備された歩行者デッキを歩けば、ゆっくりと通過する浅草発着の通勤電車や「リバティ」「スペーシア」といった特急車両の走行音も間近で感じられ、鉄道好きにはたまらない場所になりそうだ。また歴史的に価値がある橋の構造も側面から観察できるため「鉄橋ファン」にとっても見逃せないはずだ。

鉄道高架下の「東京ミズマチ」

隅田公園に隣接した東京ミズマチは6月18日に開業したウエストゾーンと、7月以降順次オープン予定のイーストゾーンからなる。それぞれ7つずつ計14の店舗などが入る区画がある。2つのゾーンは北十間川にかかる源森橋のたもとで分けられる。

「東京ミズマチ」ウエストゾーンの北側。隅田公園に面している(記者撮影)
南側は北十間川に沿ってテラスが整備された(記者撮影)

ウエストゾーンには曳舟の和菓子店「いちや」の甘味処や、表参道の「パンとエスプレッソと」のベーカリーカフェ「むうや」といった人気店が手がける新業態の店舗などが並ぶ。北側の隅田公園には水戸藩下屋敷の遺構を活用した日本庭園があり、桜の名所で花火大会も開催される。南側は親水テラスとなっている。隅田公園に芝生広場が整備されるなど、墨田区の整備事業で南北のどちら側も開放的になっており、一般的な鉄道高架下のイメージとは異なっている。

今後開業するイーストゾーンには、ホステルのほか、クリーニング・コインランドリー、ファミリーマートなど、地元住民や旅行者が利用しやすい店舗が入る。東武は「近隣にお住まいの方が旅するように過ごし、国内外の観光のお客さまが暮らすように滞在してほしい」とコンセプトをアピールする。ここから東側に少し進めば、とうきょうスカイツリー駅に着く。

いまから8年前の2012年3月17日、東武伊勢崎線の業平橋駅が「とうきょうスカイツリー駅」に改称、路線にも東武スカイツリーラインの愛称が付けられた。同年5月22日にはスカイツリーの展望台や商業施設が開業した。

堂々とした風格がある東武浅草駅の正面(記者撮影)

近年の訪日外国人観光客の急増も手伝って、浅草と東京スカイツリータウンは、それぞれ年間3000万人が訪れる都内有数の人気スポットとなっていた。両エリアをつなぐ回遊ルートが完成することで、今年はスカイツリー開業以来の大きな節目の年となるはずだった。

だが、新型コロナウイルスの感染拡大は、東武肝煎りのプロジェクトにも水を差した。当初、すみだリバーウォークは4月13日、東京ミズマチのウエストゾーンは4月17日に開業する予定だった。いったん5月に変更となった後さらに延期され、6月18日にようやくオープンを迎えた。訪日客が街から消えたいま、開業後も計画段階での目算が狂うことになるのは間違いない。

浅草駅の魅力再発見?

東武の担当者は「外国人観光客もしっかりと戻ってくるのが完成形だ」と話す。すみだリバーウォークや東京ミズマチは、立地の特性から開放感と“通気性”は十分。密集を避けて気軽に訪れるにはぴったりの場所だ。まずは新スポットの認知度を高め、東武沿線をはじめとする国内からの観光需要を取り込むことが肝要といえそうだ。

正面口に比べると地味な浅草駅北口(記者撮影)

ゆっくりと川を渡った電車は、今度は南側に急カーブして浅草駅の駅ビル2階部分に入っていく。関東で初めて百貨店を併設したターミナルのレトロな建物も隅田川橋梁ができた1931年の竣工。設計は南海難波駅や近鉄宇治山田駅を手がけた久野節による。外観は2012年、開業当時に近い姿にリニューアルされている。

雷門通りの吾妻橋交差点に面した堂々とした正面口とは対照的に、北口は暗い高架下にあって、また別の“昭和の雰囲気”を醸し出している。浅草駅からすみだリバーウォークと東京ミズマチ方面を散策するにはこの出口が便利で、実は浅草寺にも近い。電車を降りて北口から出てみれば、これまでとは違う落ち着いた浅草の魅力も発見できるかもしれない。

無断転載禁止
1302173 0 東洋経済オンライン 2020/07/02 11:52:49 2020/07/02 11:52:49

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