外食で「コロナ禍の値下げ」は意味がない理由

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新型コロナウイルスの影響は、外食産業にどんな影響を与えているのか(写真:まちゃー/PIXTA)

新型コロナウイルスの感染拡大の影響を大きく受けている外食業界。立ち食いそばもその例外ではないが、厳しい状況の中にも希望とも取れる変化が出てきているという。業界2大チェーンである「江戸切りそば ゆで太郎」を運営するゆで太郎システムの池田智昭社長と、「名代富士そば」を運営するダイタンホールディングスの丹有樹社長が、コロナ下での立ち食いそばの現在と未来を語り合った。

前編:「立ち食いそば」から見える東京のコロナ事情

そばは「テイクアウト」に合わない

人が減った中で、多くの飲食店がテイクアウトやデリバリーなど、店外でメニューを提供できるサービスを始めた。「ゆで太郎」「富士そば」も同様に始めたのだが。

池田:テイクアウトも、温かいそば以外のメニューで、この機会に始めたんですよ。1店舗あたりだいたい5万円ぐらいの売り上げと、思っていたよりよかったですね。

:うちはコロナの前から出前館さんと話を進めていて、ちょうどコロナのタイミングでデリバリーを始めたんですが、そこまで大きく売り上げに貢献しているかというと、そうではないですね。テイクアウトやデリバリーは、ふだん行けない人気店や高級店とか、常連さんがサポートしてあげたいと思うようなお店はいいかもしれませんが、うちがそういうお店と張り合ってもしょうがないかなというのはあります。

池田:おそばはもともとテイクアウトに向いていないですよ。お店でできたてを食べるものですから。あとはお店でできるキャパがありますから、昼どきにテイクアウトの注文が入ると、どうしても厨房が止まっちゃいますからね。郊外店はお客様の来るタイミングはバラけているので、そこまでの影響はないんですが。

:数がこなせなくなっちゃうんですよね。うちもピークが濃い店舗は、デリバリーをやらせていません。

予防ワクチンや治療薬が開発されない限り、我々は今後もコロナウイルスの感染を意識しながら、生活していかなければならない。

池田:店側ができるのは、従業員がマスクをつけて手指を消毒する。あとは店内のアルコール消毒をまめにする。それしかないですよね。

:そんなに新たにできることってないんですよね。

池田:ただ、それだけやっても、嫌な人は来ませんから。来てくれる人は前と変わらず来てくれています。来ない人がいるだけなんですよ。それはもう、どうしようもないんです。うちもゆで太郎ファンクラブというのがあって、メンバーが1000人以上いるんですが、「もうひと月も行っていない」って、SNSに投稿していますよ。外食を自粛している人は、ずっとしているんです。

新たに人を呼び込もうとする時ではない

:今、動いていない人たちは、動きたくない人たちなんですよ。ですから、新たに人を呼び込んで売り上げを戻そうと、セールをしたり値下げをしたりするのは、今の流れでは違うと思いますね。もし、新たな人たちを動かそうとするなら、もっと知恵を絞らないといけないなと思いますね。今までの安易なセールの仕方で、お客様が動くとは思えません。

ダイタンホールディングスの丹社長(写真左)と、ゆで太郎システムの池田社長(写真右)(撮影:梅谷秀司)

池田:常連さんはカタイんですけど、その方たちの来店頻度が飛躍的に上がるかというと、それも難しいでしょう。では、牛丼チェーンがやっているように、300円台の主力商品にの中に、700円台の商品を混ぜたとして、どこまで売れるのかですよね。一巡目は売れるかもしれませんが、売れ続けるかとなると難しいと思います。

:500円台と、うちとしては多少、高めの新メニューを継続して出していく予定なんですが、それがどう動くか見てからじゃないと、今後の判断はしづらいですね。東京オリンピックに向けて、財布のひもがゆるんでいったという感覚があったんですけど、今回のコロナでそれがすっかりなくなっちゃいましたね。

池田:富士そばさんは、以前はインバウンド需要がかなりあったんじゃないですか?

:はい。ですから、東京オリンピックまでに売り上げを伸ばして、その後はしぼむでしょうから、そこから店舗を整理していこうと考えていました。それが早まってしまった感じですね。今後は粛々とお店の選別作業を、やっていかなければならないでしょう。

池田:店舗の見直しというのは、やらざるをえないでしょう。うちはこの2年、タイミングが良かったというか、店舗の整理をしてきていたんです。間引きとか移転とか。今年度は閉店のための予算は組んでいないんですが、人が戻ってきていないエリアの店舗は赤字で続けていても、しょうがないですからね。候補として、いくつか出るかもしれません。

:底を1回見たんだと思うんですよね。ほんとにこの3、4、5月で底をガツンと見せられて。その中でやっていける店、やっていけない店というのをはっきり見せつけられてしまいました。あとはもうダメなところは残念ながら閉じて、またやれる場所を探してコツコツ店舗を出して、会社を強くしていくことしかできないので。

池田:立ち食いそば店だけでなく、ほかの飲食店も閉店が続くと思いますよ。テナントの解約は6か月前ですから、9月、10月、11月と、年内いっぱい、大量閉店しますよ。もともと都心はオーバーストアでしたから。チェーン店だけでなく、個人店も多いでしょうね。昭和30、40年代の高度経済成長期に始めたお店が、高齢化でもうそろそろと思っていたときに、コロナで「もうやめるか」ってなっちゃうんですね。

飽和状態だった都心部の良物件も、コロナ禍の影響で閉店が続くと予想する池田社長。いい立地の物件が空くことはチャンスなのではないだろうか。

池田:それは絶対にチャンスですよ。ただ、すぐに飛びつくほど根性があるかというと、そこは危ないかなって。

:このまま人は戻ってこないのか、あるいはある程度、時間はかかるけど前のように戻ってくるのかは、非常に注目しています。最終的には戻ってくると思うんですけど、それがいつになるのかというのが、問題ですね。

池田:結局、気持ちの問題だから怖いんですよ。気持ちだから特効薬がないんで。大丈夫って安心できるまでは、相当かかるんじゃないですかね。そういう意味では、なかなか戻らないと思いますが。いつか落ち着くとは、思うんですけどね。

女性客が増えてきている

コロナで、従来の商売のやり方が大きく変わってしまった飲食業界。ただ、その変化の中にも、いい変化が見られるという。

池田:このところ、少ないながらも女性のお客様が増えているんですよ。なぜかというと、グループではなく1人で食べるようになったから。そういうのも変わってきていますね。

:昔は女性が1人で飲食店に入ること自体、抵抗があったんでしょうけど、今は連れ立って食事に行く状況ではないですからね。

池田:立ち食いそばは基本1人だし、ワイワイするわけじゃないので、不安は少ないんですよ。その点、居酒屋やファミリーレストランのような、レジャー系の外食は厳しいでしょうね。ラーメン店も飲むお客さんの多かった日高屋は大きく落としていますから。それに比べると、立ち食いそばは日常食ですから、まだチャンスはあるかなと思いますね。

:飲食店というくくりの中では、立ち食いそばというのはまだ影響が少ないほうだと思いますよ。

池田:いろいろ変わりましたが、閉店が続いたことで、人材に関しては買い手市場に変わりました。今はいい人を採用するチャンスだと思います。先日も研修センターのトレーナーを募集して、2名、すごくいい人を採用できました。飲食店も閉店するところが増えてくるでしょうから、まだまだいい人材は出てくると思いますよ。

:人材不足はオリンピックまで続くんだろうなと思っていましたが、大きく解消されると思いますね。

レジャー性低い点が「プラス」に働いた

池田:この状況でも、超有名な飲食店はけっこう、人が入っているんですよ。ちょい高いような、なかなか予約が取れなかったようなところはそれなりに。ただ、居酒屋さんはしんどいままですね。

:そういうところから戻っていっているので、居酒屋のような大衆店は、厳しいですよね。ただ、そういう中で同じような大衆を相手にしている商売では、立ち食いそばは戻りのいいほうだと思います。

池田:お客様はグループでなく、個人ですからね。あと日常食。外食というより、レジャー性が極端に少ない、インフラみたいな感じですから。生活から外すことは、なかなか難しいんですよ。

:やりよう、生き残りようは、考えれば出てくるんじゃないかなって、希望の糸は垂れている感じは持っていますね。

池田:人がいて、国や自治体の支援でお金も借りられて、空き店舗があるから出店できて。チャンスといえばチャンスですけど、見極めるのには、まだまだ時間がかかりますね。

ただ、事実に対して現場は対応していくしかありません。今の状況がいきなり戻るわけはないので、その中で生き残るしかない。生き残るしかないでしょ。

:結局、できることは、普通の売り上げに対してどの店舗を残していけるのか。どれだけの人を雇いながら会社が成り立つのかというのを。見ていくことだけですね。大きい変化がありましたが、今後、それ以上に変わってくる可能性もありますから。

池田:そういうところは、チャンスなのかもしれませんね。

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1367358 0 東洋経済オンライン 2020/07/31 09:17:21 2020/07/31 09:17:21

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