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「JR羽田アクセス線」始動、ライバルはどう動く

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羽田空港アクセス線の「東山手ルート」を構成する予定の休止中の貨物線(写真:tommy/PIXTA)

国土交通省は1月20日、JR東日本が計画している新路線「羽田空港アクセス線(仮称)」のうち、羽田空港新駅(仮称)と東京貨物ターミナル間約5kmを結ぶ「アクセス新線」の鉄道事業申請を許可した。既存の路線を改良して新線とつなぎ、羽田空港と東京駅や宇都宮・高崎・常磐線方面を結ぶ。JR東日本の発表によると、建設費は改良区間を含めて約3000億円。開業時期は2029年度を予定している。

羽田空港アクセス線は、新線と既存の路線を結んで空港と首都圏各地を直結する構想で、新宿・池袋方面の「西山手ルート」、りんかい線方面に直通する「臨海ルート」、そして宇都宮・高崎・常磐線方面の「東山手ルート」の3ルートが計画されている。

2016年4月に国交省の交通政策審議会がとりまとめた、東京圏の鉄道整備に関する答申「東京圏における今後の都市鉄道のあり方について」では、「国際競争力の強化に資する鉄道ネットワークのプロジェクト」の1つとして記載されており、JR東日本の長期ビジョン「変革2027」でも触れられている。その計画が、ついに本格的に動き出す。

東京―羽田空港間が18分に

現状でも京急と東京モノレールという2つの鉄道アクセスが存在する羽田空港。なぜ、この計画は生まれたのか。

前記の答申によると、羽田空港アクセス線の「意義」は羽田空港と都心や新宿・渋谷・池袋・臨海副都心を結び、首都圏の各方面と羽田空港とのアクセスを向上させることである。JR東日本の資料によると、羽田空港―東京間の所要時間は約18分で、東京モノレールを利用した場合の約28分、京急利用時の約33分と比べて10分以上短縮される。羽田空港―新宿間は約23分、新木場だと約20分となる予定だ。

また、東京駅での新幹線との接続や、新宿駅での甲信越方面との特急の接続、臨海副都心エリアなどからの直通も期待されている。

羽田空港新駅は国内線の第1・第2ターミナルに設けられる予定だが、新線を国際線ターミナル(第3ターミナル)に延伸する構想もある。さらに、前記の答申に記載されている「京葉線・りんかい線相互直通運転化」と「総武線・京葉線接続新線の新設」の構想と合わせれば、羽田空港―成田空港の直通列車も可能になるだろう。

答申は、国際競争力が激化する中で東京エリアの競争力を高めることが課題になっており、そのうえで都市鉄道の機能強化が極めて重要であるとしている。その具体的な例の1つとして挙げているのが航空・新幹線との連携強化だ。代表的な例がJRの「羽田空港アクセス線」のプロジェクトであるといえる。

ただ、羽田空港アクセスに関する新線プロジェクトはJRだけではない。前述の答申には24のプロジェクトが記載されているが、「空港アクセスの向上に資するプロジェクト」はJRの羽田空港アクセス線以外にも3つある。

羽田アクセスの新線構想はほかにも

1つは、「蒲蒲線」としても知られる「新空港線」だ。東急線・JR線の蒲田駅と京急蒲田駅を結ぶことで羽田空港アクセスを改善しようという狙いで、現在は蒲田止まりとなっている東急多摩川線を矢口渡駅付近から地下化して京急蒲田まで延ばし、さらに京急空港線の大鳥居駅に接続するという構想だ。

新空港線(蒲蒲線)の実現を訴える垂れ幕=2019年12月(編集部撮影)

東急と京急の線路幅が異なるといった課題はあるが、矢口渡―京急蒲田間については事業計画が進んでおり、地元である大田区は積極的だ。また、東急多摩川線と東横線、副都心線などの直通により、新宿方面や東武東上線・西武池袋線沿線からの羽田空港アクセス改善も期待されている。

もう1つは、京成線の押上と京急線の泉岳寺間に新線を整備する「都心直結線の新設(押上―新東京―泉岳寺)」だ。両線は現在も都営地下鉄浅草線を経由して直通運転しているが、新たに東京駅近くを通る新線を建設して都心部へのアクセスを改善し、さらに成田空港・羽田空港を直結するルートにする構想である。

また、既存の路線を改良して列車の増発を可能にするのが「京急空港線羽田空港国内線ターミナル駅引上線の新設」だ。京急電鉄の羽田空港第1・第2ターミナル駅は1面2線の島式ホームで、2線がそれぞれ行き止まりとなっている。ここを掘り進めて引上線を設け、待機可能な車両の本数を増やして運用しやすくするというものだ。

既存の空港アクセス鉄道である京急の改良も含め、いずれもJR東日本のプロジェクトと競合する。そもそも、羽田空港アクセスにそれだけの需要はあるのだろうか。

2019年の羽田空港利用者数は、日本空港ビルデング発表の旅客ターミナル利用実績によると国内線が6838万2811人、国際線は1871万5998人で、合わせて8709万8809人だった。だが、コロナ禍によって2020年の国際線利用者は激減し、同年11月の旅客数は前年のわずか2.6%だった。国内線旅客数も大幅に落ち込んでいる。

国内でコロナ感染拡大が本格化し始めた2020年3月の羽田空港国際線ターミナル(撮影:梅谷秀司)

現在の利用者激減はコロナ禍の影響によるものであり、収束すれば利用者数は回復に向かうと思われるが、訪日客の急増が続いていた近年も、京急電鉄と東京モノレール、それとバスで羽田空港へのアクセスはさばけていたのも事実だ。羽田空港の発着便や利用者数が今後も増えるのでなければ、単純に交通手段だけを増やしても意味がないだろう。

「共存共栄」を大切に

また、アクセス交通に求められるのは必ずしも拠点間の大量輸送だけではない。筆者のように東京の郊外エリアに暮らしていると、最寄り駅から空港へ直行し、必ず座れるリムジンバスのほうが便利といえる。2015年3月には首都高速道路の中央環状線が全通して車による空港アクセスが改善され、たとえば新宿―羽田空港間はバスで約25分に短縮された。

JR東日本の羽田空港アクセス線の鉄道事業認可により、羽田空港への鉄道アクセスは増えることになる。しかし、コロナ禍で現在ある空港アクセスの交通機関は大きな影響を受けており、航空需要の先行きがどうなるかも見通しが立たない。需要が旺盛であれば競争による発展も見込めるものの、今後は既存の交通機関もあわせて維持・発展を確保できるようにしなければ共存共栄が図れずに列車の本数減やバスの減便などを招き、かえって不便になる恐れもあるだろう。

JRの羽田空港アクセス線以外の空港アクセス路線プロジェクトがどのように進展するかはわからない。だが、今後は単に新たな路線を整備するよりも、鉄道やバスなどそれぞれの交通機関の特性を生かし、全体的な空港アクセスの利便性を向上させる方策が重要になるのではないだろうか。

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1821705 0 東洋経済オンライン 2021/02/11 08:29:22 2021/02/11 08:29:22 2021/02/11 08:29:22

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