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鉄道きっぷ「転売ヤー」、なぜ規制できないのか

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185系電車は臨時快速「ムーンライトながら」としても活躍した(写真:Jun Kaida/PIXTA)

国鉄時代から活躍していた185系が特急「踊り子」号の定期運用から離脱した。その185系を利用し多客期に運転をされていた臨時快速「ムーンライトながら」号(東京―大垣間)も今後は運転をしないこととなっている。

転売目的の買い占めが問題に

臨時快速「ムーンライトながら」号といえば、指定席券を巡って数年前からいろいろと問題が噴出していた。購入が困難な一方、ネットでは高値で転売をされているということなどである。指定席券だけでなく、最近では販売数量限定の記念きっぷが発売日にはネットオークションで売りに出される、というような現象も目に付くようになった。

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何らかの事情で買えなかったものをオークションで多少高くても買えるというのはありがたいときもある。しかし、明らかに当初から転売目的で仕入れたと思われる出品には大きな違和感を覚える。

2019年6月から「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」(以下「チケット不正転売防止法」)が制定されたが、これは鉄道のきっぷに適用はないのだろうか。

利用するつもりで列車の指定席券を買ったものの、諸事情で行けなくなったということは誰にでもある。不要となった場合、本来は手数料を支払って払い戻すべきなのかもしれないが、譲渡すること自体は禁じられない。購入した鉄道のきっぷを使用開始後に譲渡することはできないが(JR東日本旅客営業規則第167条1項(7)等参照)、逆に解釈すれば使用前の譲渡は禁じられていないということになる。

一方で、「指定席券の転売」に関して「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」(以下「迷惑防止条例」)違反で検挙される者がたまにいる。

「ダフ屋」行為は条例で禁止

迷惑防止条例は痴漢や「ダフ屋」を処罰する法令として知られる。ダフ屋は「あるなら買うよ、ないなら売るよ」とチケットを他人から入手して高く売ることで利益を得る商売である。迷惑防止条例は各自治体で制定されているが、例えば、東京都迷惑防止条例では第2条でまさに乗車券や観覧券などについてのダフ屋行為を違法なものと規定している。

この規定では、

①乗車券などを不特定多数の者に転売し、または不特定の者に転売する目的を有する者に交付するため、乗車券等を公共の場所または公共の乗り物において、買ったり、うろついたり、人につきまとったり、人に呼び掛けたり、ビラその他の文書図画を配ったり、公衆の列に加わって買おうとしたりすること
②転売する目的で得た乗車券等を、公共の場所又は公共の乗物において、不特定の者に、売り、又はうろつき、人につきまとい、人に呼び掛け、ビラその他の文書図画を配り、 もしくは乗車券等を展示して売ろうとしたりすること

を禁止している。違反したら6カ月以下の懲役か50万円以下の罰金が科せられる。

調べてみると、「指定席券の転売」に関して逮捕された事例は、購入が困難になると見込まれる指定席券をインターネットでの高値転売目的で購入したという理由のようである。

ただこれは、乗車券等をインターネットで転売する行為が違反ということではなく、「転売目的で乗車券を購入しようとして公衆の列に加わったこと」を違法としたもののようである。 

迷惑防止条例では、従来からの典型的なダフ屋を念頭においているためか、物理的な公共の場所や列車内などでのダフ屋行為に処罰対象を限定している。インターネットなどの仮想空間は想定されていない。そのため、ネットオークションで乗車券などを転売すること自体を禁じてはいない。

また、「物価統制令」で暴利をむさぼる不当な転売を処罰するという手法もあるが、これは古い法令で目的が「終戦後の事態に対処して物価の安定を確保することで社会経済秩序を維持、国民生活の安定を図る」ということにある。昨今の不当転売に当てはめるのはそもそも無理があるようにも思う。

鉄道のきっぷは対象外

一方、2019年6月に施行されたチケット不正転売防止法により、「特定興行入場券」と指定される演劇関係のチケットを不正に転売したり、不正転売の目的で譲り受けたりできないようになった。

この法律の目的は「特定興行入場券の不正転売を禁止するとともに、その防止等に関する措置等を定めることにより、興行入場券の適正な流通を確保し、もって興行の振興を通じた文化及びスポーツの振興並びに国民の消費生活の安定に寄与するとともに、心豊かな国民生活の実現に資すること」にある(第1条)。

「映画、演劇、演芸、音楽、舞踊その他の芸術及び芸能又はスポーツを不特定又は多数の者に見せ、又は聴かせる」という興行の入場券を対象にしており、鉄道の乗車券は対象にしていない。

鉄道の乗車券や指定席券は、列車での移動のためや移動時の着席確保のためのチケットである。乗ろうと思っていた列車に乗れなくなった場合でも、他の列車、あるいはバスや飛行機など他の交通機関を利用すれば移動や着席の目的は達成できる。

一方で、コンサートのチケットは、まさにそのアーティストのそのときのコンサートに行くのでなければ意味がない。代替性があるものと、そうでないものとで扱いが異なっているということもいえるだろう。

しかし、チケット不正転売防止法が定められたのは「ほしいのに買い占められて買えない」ということを回避するということが大きな理由である。昨今隆盛を極めている観光列車は、乗ることが目的の列車であり単なる移動手段ではない。大型観光企画「デスティネーションキャンペーン」などの機会に、特別に運行される希少な列車も同様である。

これらの列車はコンサートと同様に代替性に乏しい。しかも指定席ならコンサート以上に限られた席数しかない。記念きっぷも普通の入場券や乗車券と違ってやはり代替性がない。鉄道のきっぷとコンサートのチケットの扱いを画一的に峻別できるのかどうかは疑問がある。

鉄道の世界でもしっかり網を

取引は供給者と需要者とのバランスで価格や条件が決まるし、目端が利くことは商売の才覚でもある。転売をする人は売れ残りのリスクも抱えるわけでもあるし、自由な経済活動の保障の点からも利益と不利益を考えて行う転売それ自体を一律に禁じる必要はない。

しかし、正規の問屋でも卸業者でもない者が、供給者と需要者で直接行われるはずの取引に強引に首を突っ込んで取引を歪めるのは、正当な取引を阻害するものであって需要者を食い物にするものである。自由な経済活動に対する挑戦でもある。

チケット不正転売防止法が「国民の消費生活の安定に寄与」するというなら、適正な価格で鉄道の旅を楽しむことも「心豊かな国民生活の実現」のためには重要である。

いわゆる「転売ヤー」の横行を放置しておけば「きっぷが買い占められて正規の値段で買えない」「完売のはずなのに実際は空席が目立つ」という事態を招きかねない。コンサートチケットの不正転売を禁止するのであれば、鉄道の世界でもしっかりと網をかけてほしいと願う。

もし、高額転売を狙って買い占める行為が鉄道趣味者によってなされているのだとすれば、鉄道会社側の対策強化によって、いずれは自らの趣味の世界を衰退させることにつながりかねない、という点も指摘しておきたい。

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1912800 0 東洋経済オンライン 2021/03/18 09:00:02 2021/03/18 09:00:02 2021/03/18 09:00:02

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