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幽霊会員の「フィットネス離れ」が起こす大問題

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コロナ禍でフィットネス業界は大きな危機に立たされている(写真:mits / PIXTA)

「コストをまかなえるほどに顧客が戻ってくるまでの、先の読めない我慢比べだ」――。総合フィットネスクラブ大手、セントラルスポーツの髙根大八・営業企画部シニアマネージャーは業界の現状をそう漏らす。

総合型フィットネスクラブは、トレーニングジムや室内プール、ヨガなどのレッスンを行うスタジオなどを併設し、コロナ前は多くの利用者で賑わっていた。ところが、この1年で状況は一変。業界大手のコナミスポーツクラブやセントラルスポーツ、ルネサンスなどは危機に直面している。

フィットネスクラブの主要な収入源となるのが、会費収入だ。経済産業省の『特定サービス産業動態統計調査』をもとに試算すると、2019年に約3310億円あったフィットネスクラブの会費収入は、2020年に前年比35.4%減の約2140億円にまで激減。回復はまだまだ遠く、2021年1月の会費収入も前年同月比27%減と落ち込んだままだ。

各フィットネスクラブの業績も軒並み厳しい。セントラルスポーツでは、2020年4~9月のフィットネス部門の売上高は前年同期比49.2%減の77.6億円に、ルネサンスも同期間のフィットネス部門の売上高が同52.1%減の57.3億円にまで激減した。さらに2020年4~12月のセントラルスポーツ全社での営業利益は前年同期比91.6%減の2億4000万円の大幅減益に、ルネサンスは2019年4~12月の29億9500万円の営業黒字から、2020年の同時期には33億9300万円の赤字へと転落した。

幽霊会員も退会する人が増える

業績を押し下げている要因の1つが「幽霊会員」の減少だ。フィットネスクラブの会員の中には、会費を支払うもののほとんど施設を利用しない、いわば「幽霊会員」も多い。ルネサンスの場合、1カ月の間に1度もフィットネスクラブを利用しない会員の割合は、コロナ前の段階で2割を占めていた。

ところがコロナの感染拡大を経て、感染することに不安を感じる会員が退会するのみならず、幽霊会員も「『そういえばフィットネスクラブに通っておらず、無駄なお金を払っていた』と気づいて、退会する人が増えた」(セントラルスポーツの髙根シニアマネージャー)。

その結果、セントラルスポーツでは2020年の6~7月には、前年同期と比較してフィットネスクラブの会員が3割も減少。外出の機運が高まった後も会員数はコロナ前の2019年の水準に遠く、足元では2019年と比較して会員数が2割減少している。

コロナ前の水準にまで業績を立て直すには、会員の新規獲得や離脱を防ぐことがカギになるが、長年続いてきたビジネスモデルを転換するのもなかなか難しい。

フィットネスクラブ業界では、都度払いのサービスは一般的でなく、各社は月会費で着実に売り上げを立ててきた。エニタイムフィットネスを運営するファストフィットネスジャパンの土屋敦之社長は、「業界ではこれまで、月会費でないと収益を取れないという結論にたどり着いており、ビジネスモデルを変えようがない。会員数を戻すのが本来の道だが、幽霊会員の恩恵がなくなる中で難しく、コスト削減もやりきっている感がある」と語る。いつでも行ける都度払いだと結局通わなくなることも多く、安定的な売り上げを確保するのは難しいのが現状だ。

月会費を見直す取り組みも

それでも、会員の月会費への依存度の高さを見直す取り組みも徐々に始まっている。ルネサンスの吉田智宣スポーツクラブ事業本部長は、「柱は従来通り会員ビジネスだが、コロナ禍のような事態が起きたときに沈まないため、会員以外の売り上げ確保とコスト削減を進める」と話す。

店舗に来られない人に向けたオンラインレッスンなどによる売り上げや、自治体から受託する高齢者の運動教室事業など、会費以外の売り上げが占める割合を増やしていく算段だ。

実際にセントラルスポーツでは、2020年夏より、人気インストラクターのレッスンをオンライン配信することで、人気授業を地方店舗でも受講できる取り組みも始めた。当初は約10店舗で開始したが、2021年春の時点で対象店舗は約100店にまで拡大しており、今年の夏には約150店で展開予定だ。

「経費はできるだけ今の形を維持しながら、今は痩せ細っている収入を徐々に膨らませたい。コロナ禍で今までフィットネスクラブに通っていなかった人が運動の価値に気付いたので、時間がかかったとしても客数は徐々に元に戻る」(髙根シニアマネージャー)と、強気の姿勢を見せる。とはいえ、こうした事業の規模感はまだ非常に小さく、リスク分散に寄与するほど成長させられるかは未知数だ。

さらに月会費への依存の高さ以外にも、フィットネスクラブの事業構造には根本的な問題がある。

フィットネスクラブは、プールがない店舗でも約5億円、プールがあるクラブでは10億円もの開業費用をかけ、およそ10年間で巨額の初期投資を回収するビジネスモデルだ。店舗賃料やプールなどの水道光熱費、スタジオレッスンを行うインストラクターなどの人件費は、会員数が変わっても大きく変わらない。そのため、損益分岐点を超える会員数を集めれば容易に利益を稼げる。大型店ともなると、1店舗当たり3000人程度の会員を集めることが可能だ。

これまで集客が軌道に乗れば容易に稼げる仕組みを確立してきたが、コロナ禍ではこうした「強み」が「弱み」へと一転した。会員数が激減したことで、これまでは成り立ってきた損益分岐点に届かない店舗が増えている。

費用削減を進めるが…

ルネサンスでは、会員数の回復が進んでいた2020年12月頃でも、店舗単位で黒字化していたのは半分近くにとどまっていた。だが会員数の縮小が長期化すると、今まで作り上げられたビジネスモデルが一転して、多額の初期投資を回収できない事態に陥りかねない。

もちろん各社ともただ手をこまぬいているわけではなく、費用削減も進めている。セントラルスポーツでは、水道光熱費などのほか、休会手続きや会員コース変更などの事務業務を受け付ける時間の短縮などによる費用削減も進めている。

ただし、経費削減を進めても、会員数確保のための施策の見直しをしても、やはり現時点では会員数減少をまかなうレベルにまでは至っていない。ついには値上げをする企業も続出している。

ルネサンスは2021年の4月よりフィットネスクラブの料金を税込み月額990円値上げした。従来は約7000円だった平均単価が大きく上昇する。東急スポーツオアシスや野村不動産ホールディングス傘下のメガロスでも、5月以降の値上げ予定が続く。

客離れが気になるところだが、ルネサンスの吉田スポーツクラブ事業本部長は「事前の試算ほどには、値上げによって退会率が悪化しなかった。来館している人にとっては、約1000円価格が上がっても価値がある場所と認識されている」と話す。

ただ、新型コロナウイルスの感染状況が一進一退の中、総合型フィットネスクラブ各社ともコロナ前の会員数への回復はまだまだ遠い。

新年や新年度を節目に入会する人が多いフィットネスクラブでは、1月と4月が書き入れ時。だが今年1月は緊急事態宣言により例年と比べ入会者数が大きく減少し、4月の入会者数も、新型コロナウイルス感染者数の増加に合わせて大きく影響を受けているようだ。

各社は長期間の我慢比べに

大規模な退店をする企業も現れ始めている。今年に入り、コナミスポーツは2月末に9店舗、5月末に16店舗を閉店すると発表。直営店は2021年3月末時点で168店舗あり、閉店数は実に全体の1割以上にのぼる。業界大手の中で財務状況が著しく悪い会社はないものの、大規模に新たな収入源を獲得する未来が見えない中、フィットネスクラブ業界は長期間の我慢比べの様相を呈している。

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1994684 0 東洋経済オンライン 2021/04/22 08:57:46 2021/04/23 18:36:33 2021/04/23 18:36:33

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