実は券売機でも買える「長い片道切符」で自由な旅

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混雑しない時期を選んで静かな旅。温泉旅館で1人の部屋食も楽しい(筆者撮影)

週末旅行家  八田裕之

今年8月から9月にかけ、再び増加の一途を辿ったコロナ陽性者数。10月以降、その状況が変化してきた。私自身は、1人旅で十分感染対策を行い、混雑した場所を避け、人と会話しないなど旅先での行状に気をつければ問題はない、と考えていたが、今夏の状況はさすがに気落ちした。

私はJ2リーグのジェフユナイテッド市原・千葉を応援しに全国を巡るのが趣味だが、この影響で山形、甲府、相模原、群馬などアウェー席の販売が停止される憂き目にあった。

鉄道ファン待望の18きっぷの季節でもあった。ただ、1日数本しかないような路線、例えば芸備線の備後落合―新見間、只見線、上越線の水上―越後湯沢間などは、どうしても混雑する線区となる。今夏もラッシュ時のようになってしまった、ある日の芸備線の様相をツイッターで見かけた。

ローカル線を1人ひっそり旅する

若い頃に読んだ、鉄道紀行作家の故・宮脇俊三氏の著作「車窓はテレビより面白い」の中で、廃止間近の湧網線が連日鉄道ファンで満員になってしまった描写がずっと忘れられないでいる。

「高校生らしい一人が叫んだ。『湧網線なんか早く廃止になってくれ。20日が待ち遠しいよ』20日からバスに転換されるのである。(中略) ローカル線は地元の人のもの。鉄道マニアのものではないのだ」

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18きっぷの時期はどうしても混雑しがちだ。もちろん全線完乗を目指す方や、初めての路線に向かうには絶好の時期である。けれど、ローカル線は地元の方々の大切な生活路線である。できれば地元客ばかりの列車に1人ひっそりと混ざって地域の日常に紛れ込む、旅行者にとっての非日常に浸りたい。

再び、旅に出かけられる状況が見えてきたが、このご時世、密となる状況は避けたいところだ。

そこで今回提案するのは、単に目的地に往復するのではない、長距離の片道切符や「一筆書き切符」の利用である。

18きっぷは気分で行程を変えられる自由があるが、使いづらい面もある。運休などトラブル時の保証はないし、長距離移動だと時間がかかるので食費や宿泊費などがかさみ、結局総費用が新幹線や割安な飛行機を使うのと大差ない場合がある。途中で「ワープ」と称して乗車券と特急券を購入して優等列車に乗った場合、普通に切符を買ったほうが安くあがることもある。

JRの運賃は、距離が長くなるにつれキロ当たりの単価が安くなる「長距離逓減制」という仕組みになっている。これを利用して、目的地に単純往復するのでなく、なるべく長い片道切符を作るのだ。

経路上に重複する駅がなければ、どこまでも長い片道切符を仕立てることができ、行って戻ってくる「一筆書き」の形にもできる。規則なので通年で使えるのが最大の利点だ。

例外(東京近郊区間など「大都市近郊区間」というエリア内で完結する場合は101km以上でも途中下車不可、有効期間1日)はあるが、原則的に営業キロが101km以上であれば後戻りはできないものの途中下車ができるし、料金券を買えば新幹線や特急も利用できる。有効期間も200kmごとに1日ずつ増えていく。

また、運休などのトラブルで予定が変わった場合はそこで打ち切り精算することもできる。実は、今回紹介する事例でこの点が大きく役立った。

「一筆」にするか片道長距離にするか

7月11日のブラウブリッツ秋田戦、18きっぷ期間前だったこともあり、これを用いた。秋田は今シーズンからJ2に昇格したため、日曜ナイターだったが一番行きたいアウェー戦、翌日の月曜に休みを取り、10日に出発した。

買った切符は以下の通りである。

東京都区内→(東北新幹線)→古川→(陸羽東線)→新庄→(奥羽本線)→秋田→(羽越本線)→新発田→(白新線)→新潟
【1万1880円/有効期間6日】

新潟から先は新幹線で東京に戻るので、実際には経路がぶつかる大宮まで「6」の字のような「一筆書き切符」も買える。ただ、東京駅で自動改札を通れなくなるなど面倒なのでこちらを選んだ。新潟からは「えきねっと」を利用し、上越新幹線を割安なチケットレスサービス(新幹線eチケット)で利用する算段である。

このルートの切符はみどりの窓口でしか買えないので、丁寧に紙に上記のルートを記して係員に渡して購入した。慣れない係員もいるので、このようにするとスムーズだ。

実際には、みどりの窓口に行かずとも「一筆書き切符」や長距離の片道切符は指定席券売機で買える場合も多い。これについては後述する。

初日の宿泊地は陸羽東線の途中駅、鳴子御殿湯の温泉宿とした。翌日、新庄に抜けて、奥羽本線で秋田に向かう中継地である。あいにくの小雨模様、ササニシキのふるさと、大崎市の水田地帯を眺めながら、15時前に鳴子御殿湯に到着した。

陸羽東線の鳴子御殿湯駅。1面1線の小さな駅だ(筆者撮影)

駅前の観光ストアに立ち寄る。土産物だけではなく、子供たちが喜びそうなミニ四駆も売っていて嬉しくなる。一角のテーブルで地ビールを飲み、雨のなか小走りで温泉宿にむかった。

コロナの影響を宿主に聞いたが、昨年度実績の50%を超え、持続化給付金の対象にならなかったという。ワザと予約を断って50%以下にするズルい例もあるようだが、この宿は今日のように雨の中来てくださるお客様を大切にするため正直に対応したという。部屋食、各所に消毒用アルコールがおいてあり、感染症対策も万全であった。

翌朝、雨音で目が覚めた。山形県内陸部が雨予報だったので運行情報を見る。陸羽西線の新庄―余目間が運休だという。私のルートに影響はなさそうだ。

一旦精算して再度購入

ところが駅に到着すると状況が変わっている。無人駅の電光掲示板には、鳴子温泉―新庄間も雨のため運休との情報が流れていた。急きょ古川に戻り、東北新幹線で盛岡に出て秋田新幹線で秋田に向かうこととした。

古川駅でここまでの切符を精算(鳴子御殿湯―新潟間を払い戻し)し、新たな切符を購入した。

鳴子御殿湯→(陸羽東線)→古川→(東北新幹線)→盛岡→(秋田新幹線)→秋田→(羽越本線)→新発田→(白新線)→新潟→(上越新幹線)→東京都区内
【11330円/有効期間6日】

今回は、最初に買った東京都区内発の切符と違い、大宮で経路がぶつかることがない。このため東京都区内まで購入した。

盛岡で秋田新幹線に乗り換える。沿線には青空が広がっている。山形県の内陸部は本当に大雨だったのだろうか、と思いながら夕刻、秋田駅に到着した。

ブラウブリッツ秋田のホーム、ソユースタジアムまでは秋田駅から3km強。交通手段は路線バスのみだ。スタジアムに着くと地元のミュージシャンによるバンド演奏が行われている。コロナの影響はそれほどでもないのだろう、ビールを飲みながら聴き入る。私はミュージシャンでもあり、音楽活動が思うようにできない今、この状況をうらやましく思った。

J2リーグ・ブラウブリッツ秋田のホームスタジアム、ソユースタジアム(筆者撮影)

試合は、前半の途中から大雨となり、後半など田んぼの中でボールを蹴り合っているような、とてもサッカーとはいえない状況となり、1-1の引き分けで終わった。

困ったのが帰途である。上述の通り、交通手段は路線バスのみ、バスが1時間来ないのだ。多くのジェフサポーターは3km強の道のりを雨のなか秋田駅まで歩く選択をした。降りしきる雨、暗い道。どこに水たまりがあるかわからない。たまたま一緒だったサポ仲間に「水たまりはね、身をかがめるとよく見えるんだよ」と、小学生の時に読んだ学研「忍術・手品のひみつ」で得た知識を披瀝しながら歩いた。

今度は羽越本線が運休に

翌朝起きると秋田は晴れていたが、予定していた羽越本線は強風のため運休とのこと。秋田駅のみどりの窓口で、再び昨日変更したばかりの切符の精算をした。

今回のルート。途中で2回精算した(筆者作図)

素直に秋田から秋田新幹線で帰ることにした。けれどもせっかくなので、切符は男鹿→東京都区内とした。

秋田から男鹿までは片道切符を買った。EV-E801系という新型の蓄電池駆動電車で数年ぶりに訪れた男鹿駅はリニューアルされて、小綺麗な姿に変貌していた。

駅近くのカフェで、盛岡の地ビール「ベアレン」を飲み、秋田に戻った。駅ビルで「比内地鶏の究極親子丼」を味わい、秋田新幹線で東京に戻った。

今回の旅では切符を2回も精算することになったが、「一筆書き切符」を含む長距離片道切符であれば、このような対応も問題なく可能である。

最後に、指定席券売機で長距離の片道切符や「一筆書き切符」を買う方法を説明する。最近はコンビニでも店員との接触を避けるタイプのレジが増えている。感染対策として人と接触しないためにもいい。

例として、以下のように大宮から新幹線、もしくはサンライズ瀬戸で岡山を経由し、土讃線、徳島線を経由して徳島に出て、鳴門まで行く切符を作ってみる。

大宮→(東北本線)→東京→(東海道本線・新幹線)→岡山→(宇野線・本四備讃線)→宇多津→(土讃線)→阿波池田→(徳島線)→徳島→(高徳線)→池谷→(鳴門線)→鳴門

一目見ただけで複雑に思えるが、この切符を係員の手をわずらわすことなく指定席券売機で買えるのだ。ただし、新幹線・特急列車の走る3区間までが限度である。

【操作方法】
1:指定席券売機で「乗車券」を押下、日付、人数を指定し「特急等を利用する」を選択
2:乗車駅に大宮を指定、最初に特急に乗る駅を「東京」と指定。新幹線を選択し、行き先を「岡山」とする
3:「岡山駅で特急に乗り換える」を押下、「特急南風・しまんと・あしずり」を選ぶ。さらに「阿波池田で特急に乗り換える」、次に「特急剣山・むろと」を選択(これで特急の走る3区間を選んだことになる)
4:「降車」で徳島を選択し、「徳島駅で普通列車に乗り換える」を押下し「鳴門」を入力

これで6日間有効、1万2470円の大宮発鳴門行きの片道切符ができあがる。注意点は、最後の精算時に出てくる画面で、阿波池田、徳島で「途中下車をしない」を選択すること。佃―阿波池田間、佐古―徳島間が重複するからである(佃も佐古も特急は停まらないためこのようになる)。仮に両駅で降りる場合はここの区間外料金を払う必要がある。

なお、特急は新幹線でなく「サンライズ瀬戸」を選択することも可能だ。そのほうが簡単かもしれない。

都区内発着「一筆書き」も買える

このほか、東京から金沢に行く時など「東京都区内―東京都区内」という一筆書き切符も指定席券売機で買うことができる。

ただし、出発地と到着地を東京にするとエラーとなる。この場合は出発駅を「東京駅」、到着駅を「品川駅」と指定すればOKだ。東京→(北陸新幹線)→金沢→(北陸本線)→米原→(東海道新幹線)→品川、と指定するのだ。

指定席券売機で一筆書き切符を購入する方法はあまり知られていないようだ。ぜひ参考にしてほしい。ただし、今回の陸羽東線のように特急列車が走っていないようなローカル線が早い段階で入る場合、かつさらに遠くまでの一筆書き切符を買うときは、みどりの窓口で買うしかない。

このままコロナ禍が再拡大せず、少しでも感染対策ばかりに気を使わない旅ができる日を祈っている。

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